ビジネス

協力金バブルに踊った飲食店主たちの末路 時短解除で連鎖倒産も

飲食店への営業時間の短縮要請が全面的に解除され、夜を迎えた東京・有楽町の飲食店街を歩く人たち=10月25日午後、東京都千代田区(時事通信フォト)

飲食店への営業時間の短縮要請が全面的に解除され、夜を迎えた東京・有楽町の飲食店街を歩く人たち=10月25日午後、東京都千代田区(時事通信フォト)

 イソップ寓話のひとつ『アリとキリギリス』といえば、景気が良いときでも調子にのらず、コツコツと働いて備える重要性を伝える代表的な話だ。誰もが納得する内容だと思うが、いざ実生活でそれを実践できるかというと、享楽と浪費に溺れるほうがたやすい。ライターの森鷹久氏が、新型コロナウイルスの感染拡大によって閉塞したムードが覆うなか、対策協力金バブルに踊った飲食店主たちを待ち受ける今後と、その余波に怯える関係者たちについてレポートする。

 * * *
「いよいよ再開です。本当に長かった。ギリギリのところでやってきて、色々なことを言われたりもして、飲食やってきてこんなに辛かったことはない。このタイミングを待っていました」

 東京都は10月25日から、都の認証を受けた上で時短営業や酒類提供の制限を行なっていた飲食店に対し、制限を解除した。その数日前、東京都墨田区の居酒屋店経営・石橋満さん(仮名・50代)は、顔を綻ばせながら、通常営業を再開できる喜びを語ってくれたが、一方で気掛かりなこともあると下を向く。

「給付金、店によってはかなり大きな額もらっちゃって、色々使ったりした人がいたでしょう。まさに”アリとキリギリス”状態にならないかと心配なんです。そうなると、この通りの賑わいもなくなっちゃうね」(石橋さん)

 石橋さんの店舗の隣、向かい側にはそれぞれ洋風居酒屋・A店と創作料理を出す居酒屋・B店があった。

 A店は先代から引き継いだ息子が、約4年前にコンセプトを変え再オープンしたが振るわず。息子の知人だというコンサルタントの助言によって韓国風、しばらくするとアジア風、などと雰囲気を変えながら細々と営業を続けていた。しかし、何度目かのモデルチェンジで洋風に鞍替えした直後に、コロナ禍がやってきた。

 B店は、都内の名店で修行を積んだという若い主人が、約3年前にオープンさせた店だ。開店当初は客足が途切れることがない、まさに「人気店」の様相を博していたが、コロナ禍以降は時短営業要請などを受け、店には閑古鳥が泣いていた。弁当などのランチ販売をしていたこともあったが、昨年夏以降、営業が再開されることはなかった。

協力金がもらえなくなったら終わりだと泣いていた

 町内会の会合で、A店とB店の店主のよからぬ噂を聞いたのは、昨年の秋頃のことだった。

「A店の息子は、朝からパチンコ三昧。夜は、悪友を連れ立ってスナックやパブを飲み回っているってね。年老いた母親との二人暮らしなのに、新車を買っていた。店の営業はしてないし、貯金もないはず。金の出所は全部、協力金やら補償金ですよ」(石橋さん)

 A店と石橋さんの店はちょうど同じような規模で、売り上げは石橋さんの店の方が多かった。

 石橋さんはコロナに関連する補助金、協力金を合わせて900万円近く受け取っているから、それと同じか、もう少し低い額をA店は受け取っているとみられる。しかし、石橋さんは休業期間中、900万円を家賃や設備修繕費にまわし、やれる範囲で営業を続け倹約していた。それに対して、A店は一切営業しないどころか店主は散財の雨嵐。寝ていても、営業する以上の協力金が入ってきたのは事実のようで、A店店主の金銭感覚は完全に変わってしまったようであった。

関連記事

トピックス

俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン