ライフ

ワクチンが引き起こす分断 接種をめぐって家族が「絶縁」も 

新型コロナウイルスワクチンの接種を促す区の広報紙(時事通信フォト)

新型コロナウイルスワクチンの接種を促す区の広報紙(時事通信フォト)

 2020年に新型コロナウイルス(COVID-19)が世界でパンデミックを起こして以来、様々な場面で社会の分断と対立が起きていると語られてきた。社会の最小単位である家族だけは寄り添って暮らしたいと誰しもが思っているだろうが、現実には、家族だからこそ深刻な分断と対立が起きている。ライターの森鷹久氏が、ワクチン接種をめぐり起きた、ある家族の分断と対立を通して、コロナによって求められる社会との向き合い方について考えた。

 * * *
 都内在住の会社員・副島真澄さん(仮名・30代)は10月、やっとのことで2度の新型コロナワクチン接種を終えた。本人は「ずっと打ちたかった」というが、その割に表情は曇ったままだ。

「これで家族はバラバラになってしまうかもしれない」

 副島さんは九州出身で、大学卒業と同時に上京。現在は都内の大手デパートの正社員で、主に接客業務に当たっている。客と接触する機会が多い接客担当の社員向けに、夏ごろから「職域接種」が始まっていた。多くの社員が早々にワクチン接種を終えるなか、10月時点で、職場内でワクチン接種がまだだったのは、重いアレルギー性の疾患を持つ上司と副島さんだけだった。

「なぜ接種をしないのか、接種しないと働けなくなると何度も言われました。それでも本当のことを言うともっと面倒なことになりそうな気がして、今は体調が悪いとなんとか誤魔化してきました。でも、未接種者は接客担当から外すかもしれない、と言われ、覚悟を決めました」

ワクチンを打ってはならないと妹は本気だった

 ワクチンが怖くなかった、と言えば嘘になる。SNS上では、ワクチンのせいで重い副反応が出るとか、障害が残るかもしれない、湿疹が出て髪の毛が抜け落ちるといった真偽不明の情報が飛び交い、不安な気持ちもあった。”不妊になる”と見た時は、ネットで何時間も調べたこともあった。だが、すでに身の回りにもワクチン接種を終えた知人が多く、やはり自分もワクチンを打つべきだとは感じていた。それでも副島さんを尻込みさせたのは、ワクチンを打ってはならないと激しく主張する妹の存在だ。

「妹は二人目を妊娠中にコロナ禍になり、ものすごくナーバスになっていました。もともと勉強熱心なところもあったのですが、それから色々と調べるようになり、ワクチンは毒だ、と考えはじめたようなんです。そのせいで、高齢の父親も母親も接種はまだ。私と弟は打つべき、と思っていましたが、妹が泣き喚いて”絶対に打つな”と言うものだから、困り果てていたんです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
《同居女性も容疑を認める》清水尋也容疑者(26)Hip-hopに支えられた「私生活」、関係者が語る“仕事と切り離したプライベートの顔”【大麻所持の疑いで逮捕】
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
【大麻のルールをプレゼンしていた】俳優・清水尋也容疑者が“3か月間の米ロス留学”で発表した“マリファナの法律”「本人はどこの国へ行ってもダメ」《麻薬取締法違反で逮捕》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
清武英利氏がノンフィクション作品『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋刊)を上梓した
《出世や歳に負けるな。逃げずに書き続けよう》ノンフィクション作家・清武英利氏が語った「最後の独裁者を書いた理由」「僕は“鉱夫”でありたい」
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン