オフィスの存在が改めて見直されている
確かにコロナ禍で苦境に陥った業界は少なくないが、2008年のリーマンショック時のように、すべての業界が落ち込んでいるわけではない――それが第二の理由になる。たとえば、医療・衛生用品業界、IT、物流関係、白物家電のように、むしろ好調な業績をあげている業界も多い。そうした企業のオフィスニーズは依然として強いのだ。
コロナ禍で在宅勤務が増えて、オフィスを縮小する動きもみられたものの、2021年11月現在、コロナ禍も落ち着きつつあり、社員に出社を求める企業が増えている。なかには、在宅勤務によって、オフィスにおけるコミュニケーションの重要性が改めて確認されたとして、今後もオフィスを維持、拡大する意向の企業が少なくないともいわれている。
さらに、郊外や地方への動きも広がっているといわれるが、それは個人の住宅レベルなどにとどまり、オフィスを郊外や地方に移転する動きは、パソナグループの兵庫県淡路島への移転などごく一部に限定されている。
しかも、第三の理由として、東京23区のオフィスビルの供給量は、別掲図2にあるように2021年、2022年よりやや少なくなる見込みである点があげられる。コロナ禍で多少冷え込んだオフィス市場にとっては、プラスに作用するのではないだろうか。オフィス供給が増えて、火に油を注ぐような事態は避けられそうだ。
【図2】東京23区の大規模オフィスビル供給量推移(出典:森ビル『東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査)