ビジネス

東京のオフィス空室率が急上昇 それでも賃料の大暴落が起きないこれだけの理由

コロナで本社機能の縮小や移転などをする企業も続出(写真はイメージ)

コロナで本社機能の縮小や移転などをする企業も続出(写真はイメージ)

 2020年からの新型コロナ拡大の影響を受けて、東京都心のオフィスビルの空室率が急上昇している。平均賃料も低下しており、このままでは需給バランスが崩れて、オフィス市場は大混乱するのではないかという観測がある。しかし、実はそうではなく、まだまだ東京のオフィス市場は安泰という見方が強いのだ。いったいなぜか。住宅評論家の山下和之氏がレポートする。

 * * *
 オフィス仲介大手の三鬼商事では、全国の主要エリアのオフィスの空室率、賃料動向を毎月調査して公表している。その直近1年間の東京ビジネス地区(都心5区=千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の結果が別掲の図1だ。

東京のオフィス市場は負のスパイラルに?

 その調査によれば、3.3平方メートル当たりの賃料は右肩下がりで下落、空室率は右肩上がりで高まり、オフィス市場は急速に悪化しているようにみえる。平均賃料は1年間で8.2%下落し、空室率も1年間で3.00ポイントの上昇だ。

 一般に、オフィス市場では、空室率5%が市況の温度感を図る目安とされている。空室率が5%を超えると「景気が悪い」→「借り手が少なくなる」→「賃料が低下する」という負のスパイラルを描くようになる。反対に5%より低くなれば、「景気が良い」→「借り手が増える」→「賃料が上がる」という好循環に転化するわけだ。

【図1】東京ビジネス地区の賃料(3.3平方メートル当たり)と空室率の推移(出典:三鬼商事『オフィスマーケットデータ』)

【図1】東京ビジネス地区の賃料(3.3平方メートル当たり)と空室率の推移(出典:三鬼商事『オフィスマーケットデータ』)

リーマンショック後には空室率10%も

 その点からすれば、東京のオフィスはボーダーラインを超えて、冬の時代に一直線のようにみえるが、実はそうとは限らない。その理由はいくつか挙げられる。

 第一には、東京ビジネス地区の空室率が5%を超えることは決して珍しくないという点だ。三鬼商事の『オフィスマーケットデータ』の結果を遡ってみると、2008年のリーマンショック後には、それまで2%台の低い水準だったのが、2008年末には4%台に乗せ、2009年末には8%台、2010年半ばには10%まで上がっている。

 しかし、リーマンショックの影響が薄れてくると、2012年あたりから空室率の低下が始まり、2013年末には7%台に、2014年末には5%台まで低下し、その後は年1%程度ずつ下がって、2018年末には1%台まで低下したのだ。

 その意味では、コロナ禍という100年に一度のパンデミックで世界経済が大きな痛手を受けたのだから、多少空室率が上がるのは避けられないわけだが、リーマンショック後の深刻な事態に比べると、今回はそう悲観するものではないという見方が強い。それが第二の理由につながる。

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン