新築熱、渋谷熱が冷めて正常な状態に
そして第四には、これまでのような都心の、それも新築ビルへの一極集中に歯止めがかかりつつある点があげられる。
オフィスビルは新築ビルと既存ビルに分かれるが、空室率が大幅に上昇し、賃料が低下しているのは、新築ビルによるところが大きく、市場全体への影響は限定的だ。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響が広がるまでは、都心の新築ビルはまず例外なく満室で竣工を迎えていた。それも竣工の1年前、2年前から予約が入るほどの人気だった。
そのため、新築ビルの空室率は平均でも1%台まで低下し、3.3平方メートル当たりの賃料は一時3万3000円台まで上昇した。それが2021年9月の数値をみると、新築ビルの空室率は15.12%まで上がり、賃料は2万9300円と3万円を割り込むレベルまで低下している。
IT企業を中心として渋谷のオフィス需要は一巡か(時事通信フォト)
特に、100年に一度といわれる大規模な再開発が進んでいる渋谷には、グーグルなどのIT関係の本社が入居し、それを追うように中堅どころやスタートアップ企業が続々と渋谷に集結してきた。
そのため、渋谷のオフィス賃料は急激に上昇、一時的に千代田区より高くなったほどだが、その過熱感が冷めて、いまは千代田区より低くなっている。IT関連企業の間では、渋谷でなくても、恵比寿や五反田あたりでOKとする企業が増えている。