2021年10月13日、東京都内のガソリン価格を示す看板(時事通信フォト)

2021年10月13日、東京都内のガソリン価格を示す看板(時事通信フォト)

「車は生活のためだからさ、この辺だとセダンは不人気だし、やっぱり買い物に便利で荷物がたくさん積めるワンボックスが人気だね、誰も好き好んで乗らないような不人気車種でも程度のいいワンボックスなら買い手がつく」

 ワンボックスの不人気車種は実際に名前を挙げてくれたが、車に詳しい人でないとまず知らない。だが、そんな不人気車でもワンボックスは高騰している。RVはもっとだ。

「こんな状況だと売ってくれる人も少ないからオークションで仕入れることになる。注文受けて実際の金額伝えると高いって言われちゃうね、もう中古だから安いって時代でもないのに」

 ディーラーに売る新車がなければ下取りもないため流通は限られる。走行距離が実質0キロに近いがナンバー登録されている新車とほぼ同等の中古車である新古車に至っては、新車より高い車種もある。もちろんいまでも車種や走行距離にまったくこだわらなければ乗り出し30万円でも手に入る中古車はあるが、理屈上は買えると言っても、その理屈を主張する人だって自分が買う立場になったらそれを買うかといったら買わないだろう。

「業者がボッてるとか言うけど、そんな時代じゃないんだよ。なんでも高くなってるんだ」

 店主の言う通り、アフターコロナはもちろんだが衰退中の日本に追い打ちをかけるように商品の高騰が続いている。バイクなど30万円も出せば不人気なら大型車でも買えた時代もあったが、いまや中古バイクは車以上の高騰を続けている。もちろん半導体を始めとする部品不足による新車の生産遅れによるものだ。まして車以上に趣味性の強いこだわりの乗り物なので何でも乗りますというわけにもいかない。同様に、いま家を建てようと思うと住宅用の木材が不足しているのでこれまたとんでもなく高い。なにもかも高騰し始めている。

「この辺で車は生活必需品だからね、ガソリンもそうだけど、これ以上の値上がりは恐ろしいよ」

 車なんかいらない、電車を使えばいいやなんて地域は日本全体からすればわずかなもの、大半の地方は車がなければ不自由な生活を強いられるどころか仕事に差し障る。ガソリンに関して政府はようやく価格高騰時に補助金支給の方針を明示したが遅すぎる。日本全体でみれば物流の問題でもあり、ガソリンだけでなくあらゆる消費財の価格が上がっている。

 なんであれ、30年間平均賃金の上がらないこの国で、あらゆるものの値段が高くなるというのは本当に恐ろしいことなのだ。筆者が思うに、店主がこぼすほどには自動車関連の騒動は現状、多少の滞りで済んでいる状態だと思うが、これからの日本は国際的な通貨下落によるチープジャパンとすべてにおいての買い負けによって長く苦しむことになるかもしれない。安く買える時代は終わり、賃金はそのままに物価が上がる、必要な物の価値がひたすら上がる国となる。新車不足と中古自動車の値上がりは限定的ではあるが、まさしくその端緒である。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。著書『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)他。

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