東京五輪“大赤字”の負担で国と都がバトルへ
コロナ対策として外国人選手やスタッフの移動用に多くのタクシーを借り上げ契約したが、これも独自の配車アプリがうまく機能せず運転手は開店休業状態。当然、費用は組織委が支払った。『東京五輪の大罪』(ちくま新書)の著者でノンフィクション作家の本間龍氏が語る。
「組織委はいろんな官庁やら企業からの寄せ集め。どんな失敗をしても責任を問われないからモラルハザードが起きた。物資の確保について言えば、ムダが出ても責任は問われないが、いざというときに足りないと言われるのがいやだから、多めに確保しておく。民間企業ならこんな杜撰な発注をすれば減給やクビになるが、彼らは何の責任も問われず、元の職場に戻る」
赤字の理由は、無観客になったことだけではない。無観客になったのに、満席を想定した開催プランを適切に変えられなかったから巨額赤字を生んだことがわかる。
最後は税金でなんとかなる
もうすぐこの五輪の赤字を誰が負担するかをめぐる政府(国)と東京都のバトルが始まる。
組織委員会の武藤敏郎・事務総長は最終的な大会の収支決算が出るのは「来年4月以降になる」としているが、国と東京都、組織委員会の間で赤字分担を協議するために今年の年末頃には収支の大枠が示される見込みだ。
そこでは、「IOCとの契約では赤字は開催地の東京都が負担することになっている」という立場の堀内詔子・五輪相と、「無観客は政府の要請。政府も分担すべき」という構えの小池百合子・東京都知事による負担の押し付け合いの大喧嘩になるのは目に見えている。だが、国と都、どちらが出すにしても、最終的にはさらなる税金負担で穴埋めされることになる。
放漫な大会運営をした組織委員会に赤字を埋める資産などなく、来年6月に解散される予定だ。橋本聖子・会長や武藤事務総長以下の幹部たちは放漫運営の責任を問われず、お役御免となって逃げることができる。
「国も都も組織委も、開催さえすれば最後は税金でなんとかなる、というモラルハザードでこういうことになった」(本間氏)