「非常通報器」のボタンを押すと車掌へ緊急連絡ができる。不審者や不審物を発見したときだけでなく、乗客の体調が急変したときなどにも利用できる(写真/アフロ)

「非常通報器」のボタンを押すと車掌へ緊急連絡ができる。不審者や不審物を発見したときだけでなく、乗客の体調が急変したときなどにも利用できる(写真/アフロ)

「凶悪事件が起きると防犯カメラの設置が議論されますが、防犯カメラは車掌や指令所の係員が列車内で何が起きているか確認するためのものです。緊急時に乗客が防犯カメラの位置を把握してもあまり意味がありません。万一のときはカメラの位置確認より避難することを優先してください」(安部さん)

 テロ対策に詳しい公共政策調査会研究センター長の板橋功さんは、防犯カメラの役割についてこう解説する。

「車内の防犯カメラは、痴漢やスリの場合には抑止力になりますが、無差別殺傷事件を起こす意図的な犯人やテロリストにおいては抑止力にはなりません。しかし、事案発生時には車内の状況を車掌や運行指令室が迅速に把握して共有することで、的確な対処を行うことができます。東急電鉄では、1車両につき複数台の防犯カメラを設置し、すべて4G回線で電波を飛ばしてリアルタイムで車内の様子を把握しているそうです。

 京王線での事件のときのような対応を考えると、車内の防犯カメラは有効であり、鉄道会社はいずれも設置を進めるべきですが、コロナ禍による収益悪化で予算的に難しいという事実もある。利用者の安全性を高める名目で国が補助すべき問題だと思います」

 年末年始の帰省などで新幹線に乗る場合、どの座席を指定するべきだろうか。安部さんは「一長一短ある」と指摘する。

「脱線や衝突事故の場合は、前方の車両から突っ込むことが多いので後ろの車両の方が安全といわれます。しかし、暴漢の場合は、どこで暴れるか予測ができない。最後尾や先頭の車両だった場合、追い詰められて逃げ場を失う恐れもある。また、窓側より通路側の方が迅速に逃げやすいと一般的に考えがちですが、犯人が通路を移動する際に襲われやすくもある。だからといって、窓側は逃げ遅れるリスクが否めません。

 強いて言うなら、前にも後ろにも逃げやすい中央の車両で、乗降口に近い席が避難しやすいのではないでしょうか」

 前述の通り、新幹線は中央車両の付近に車掌が乗務するため、中央寄りの車両ほど緊急時に車掌が駆けつけやすくなる。混雑状況もポイントとなる。京師さんが明かす。

「私なら、乗客の少ない車両で、乗降口近くの通路側を選びます。痴漢やスリ、通り魔といった電車内での犯罪は、基本的に混雑している時間帯に発生するためです。なので、なるべく混雑を避け、新幹線でも空席が多い車両を選ぶ。乗車時には非常口もチェックします」

 もちろん、必ずしも犯人が混雑した車両に乗車するとは限らない。それでも、逃げやすさを優先に考えることが最善策であるのは確かだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン