国内

問われる鉄道車内の治安対策 防犯カメラのネットワーク化や通信システム拡充も

2018年に新幹線車両内で実施された乗務員や警備員らによる不審者対応訓練(時事通信フォト)

2018年に新幹線車両内で実施された乗務員や警備員らによる不審者対応訓練(時事通信フォト)

 鉄道の安全対策と聞くと、すぐに思い浮かぶのは無事故で時間通りに運行されることだ。ところが、8月の小田急線刺傷事件、10月の京王線放火刺傷事件など、普段は思い浮かばない安全対策がにわかにクローズアップされる事件が相次いで起きた。ライターの小川裕夫氏が、乗客が乗る鉄道車内の治安対策について、東海道新幹線での取り組みを中心にレポートする。

 * * *
 2021年8月6日に小田急線車内で起きた殺傷事件は、世間を大きく震撼させる大事件となった。

 同事件は、藤沢駅を発車し新宿駅へと向けて走っていた快速急行の列車で発生。犯人は刃物を振るって乗客に怪我を負わせたほか、所持していたサラダ油を床に巻いて火をつけることも試みた。不幸中の幸いながら同事件で死者は出ず、火災も発生しなかった。

 小田急線の事件の記憶が薄れる間もない10月31日、今度は京王線で類似の事件が発生した。同事件は京王八王子駅を発車して新宿駅へ向かって走っていた特急の列車内で起きている。京王線の犯人は調布駅から乗り込み、すぐ犯行に及んだ。ハロウィンの雰囲気に彩られた車内は、一転して惨劇の場と化した。

 その後も小田急線・京王線を模倣する犯行が続いている。それだけに、鉄道事業者の治安対策は喫緊の課題として浮上している。

 こうした事件で危機感を覚えるのは、鉄道事業者ばかりではない。鉄道は国民が日常的に利用する。国民の生命と財産を預かる政府が、無関係を決め込むわけにはいかない。

 小田急線の事件が発生した直後、加藤勝信官房長官(当時)や赤羽一嘉国土交通大臣(当時)、棚橋泰文国家公安委員長(当時)は揃って声明を出し、再発防止に取り組むよう関係各所へと指示した。

 鉄道車両は、過去に火災で多数の犠牲者を出した反省から不燃化が進められた。その成果もあり、簡単に火が燃え広がらないように改良されている。他方、火災への対策は手厚いが、刃物などによる無差別の犯行を防ぐ手段はない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト