国内

オミクロン株の出現は「朗報」なのか 「ヒトと共生」を可能にするウイルスへ

(共同通信社)

変異ウイルス「オミクロン株」出現は朗報なのか(共同通信社)

 11月下旬に初めて報告されてから、瞬く間に世界40か国以上に広がった新型コロナウイルスの新たな変異ウイルス「オミクロン株」。世界で最初に存在が確認された南アフリカでは1日あたりの新規感染者が1週間で4倍になり、1万6000人を突破した。

 イギリスでも日に日にオミクロン株の感染者が増え、12月上旬には300人を超えた。ノルウェーでは企業のクリスマスパーティーでクラスターが発生して13人が感染。北米ではアメリカ、カナダに次いでメキシコでも新規感染者が発生した。

 日本国内では、海外から入国した3人からオミクロン株が検出された(12月6日現在)。世界中で急速な感染拡大が続くオミクロン株とはいかなるウイルスか──。

「従来の変異株と違うのは、『変異の数』がものすごく多いことです」

 そう指摘するのは、昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さん。

「新型コロナウイルスは、表面にある、とげ状のスパイクたんぱく質を使って人間の細胞内に侵入します。世界中で猛威を振るったデルタ株はスパイクたんぱく質の変異が4か所ほどでしたが、オミクロン株は32か所に変異があることがわかっています。これまでの変異株にはなかった未知の変異が数多くあり、このウイルスがどんな特徴を持っているかの全体像がつかみづらくなっています」(二木さん)

 なぜ、それほどまでに変異が多いのか。二木さんは、「南アフリカで発生したことがポイントです」と語る。

「オミクロン株が最初に確認された南部アフリカは、エイズウイルスのHIVに感染した人が多い地域として知られています。HIVには免疫力を低下させる働きがあり、免疫不充分の人がコロナウイルスに感染したことで、変異が加速した可能性があります。

 また南部アフリカは検査やワクチン接種が充分ではなく、“新型コロナの無法地帯”のような地域のため、ウイルスが好き勝手に感染を繰り返し、大きな変異を遂げたのかもしれません」(二木さん)

 変異が多いことは、そのまま脅威につながる。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが指摘する。

「スパイクたんぱく質の変異が多くなると、免疫から逃れやすくなって感染力が強まる可能性があります。また、ワクチンが効きにくくなって、接種後に感染するブレークスルー感染が増加する恐れもあります」

 米ボストン在住の内科医・大西睦子さんが続ける。

「各国の研究者が懸念を抱いているのはオミクロン株の急速な増加です。実際に南アフリカではオミクロン株がデルタ株よりもはるかに早く広がり、膨大な人々に感染する可能性があります。実際、ベルギーのある研究者は、“オミクロン株は、同じ期間でデルタ株の3~6倍の人々を感染させる”と警告しています」

 感染力の強さとワクチンすり抜けの脅威は世界の多くの研究者から指摘されており、世界保健機関(WHO)は、オミクロン株を最も警戒度の高い「懸念される変異株(VOC)」に指定した。この先は日本でも感染が拡大する恐れがある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト