1981年2月、事件が起きる。10週ストレート勝ち抜きを懸けた大木こだま・ひかりが審査発表を待っている時、刑事が『ひかりを覚せい剤取締法違反容疑で逮捕する』と赤尾氏のもとを訪れた。
「『今すぐは勘弁してください』と止めると、『そんなこと関係ない!』と言いながらも待ってくれた。グランプリを獲得した2人がピカピカの衣装のまま楽屋に戻ってくると、ひかりに逮捕状が出された。あの場面は忘れられません」
その後も番組の勢いは失われず、漫才ブームが終焉しても新星が次々誕生した。
「ダウンタウンはオーディションの時点で完璧でした。『ファンになりました』と言ったほど。2人は当然のような顔をしてましたが(笑)」
ウッチャンナンチャンが優勝した2か月後の1986年9月に番組は終了したが、巣立った芸人は35年経った今も一線で活躍している。演劇人のイッセー尾形や役者志望のでんでんなども、世に出るチャンスを掴んだ。
「事務所が大きくても小さくても、素人でも関係ない。20個ほどの審査項目は参考程度で、評価基準は“面白いかどうか”だけでした」
愛情と公平性を兼ね備えた制作陣、夢を叶えたい出場者の熱量が伝説を生んだ。
取材・文/岡野誠
※週刊ポスト2021年12月24日号