登山者にビーコンという発信機を持ってもらい、行動をリアルタイムで把握する調査(写真提供/富士山チャレンジプラットフォーム)

登山者にビーコンを持ってもらい、行動をリアルタイムで把握する調査(写真提供/富士山チャレンジプラットフォーム)

無人機でブロックを運ぶ

 2014年の御嶽山噴火では、火口付近に居合わせた登山者58人が命を落とした。もし富士山の登山シーズンに噴火が起きれば、それをはるかに超える犠牲者が出る可能性がある。

 その時に備え、日本工営や京セラなど多くの企業が共同で立ち上げたのが、一般社団法人「富士山チャレンジプラットフォーム」だ。

 同法人の代表理事で、日本工営社員の田中義朗氏は、「以前は、富士山が噴火した時に登山者や観光客をどう把握し救助すれば良いのか、がまったく考えられていなかった」と話す。

「現在は、他の企業も賛同してくださるようになり、行政や国の研究機関などの協力も得て、2018年に日本工営を含む11社が集まって社団法人を設立しました。

 活動としては、登山者にビーコンという発信機を持ってもらい、行動をリアルタイムで把握する調査を行なっています。こうしてデータを集めることにより、退避施設を富士山のどこに作れば良いかの判断も可能になり、被害が起きやすい場所や時間帯なども把握できるようになりました」(田中氏)

 国の噴火対策も急ピッチで進められている。国交省の中部地方整備局・富士砂防事務所では、最新の技術を駆使した対策を講じている。

「富士山北麓と南麓にコンクリートブロックを合計2万個備蓄し、噴火による土砂災害が生じた際に、危険な箇所は無人機のショベルカーを遠隔操作してブロックを溶岩流や土石流などの経路に移設する計画です。

 集落への到達を食い止め、被害を最小限に抑えるよう日々準備を整えております」(富士砂防事務所)

 様々な対策を講じる企業や国。富士山噴火は決して与太話ではなくなってきている。

※週刊ポスト2021年12月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン