実際、犯人は自殺覚悟、死なばもろともで身元がバレようと関係ない「無敵の人」ばかりだが、警察としては記録があったからこそ割り出せた部分もある。抑止効果はもちろんだが、事が起こってからの捜査を円滑に運ぶ目的もあるのだろう。
「組合でも話すけど、面倒だし携行缶で売りたくないって店もあります。これが進むと田舎や寒い土地は困るでしょうね」
大きな事件が続くと、どうしても社会は極端に走ってしまう。しかし車で人を轢き殺す事件は毎日起きても車そのものは規制できない。ガソリンもそのディレンマに陥っている。これ以上の厳格化は現実的ではないし、ガソリンスタンドのみならず農家や工業系の現場負担も増える。北国では日常生活に影響を及ぼす。かといって「悪意の死にたがり」に厳罰化も無意味。本当に難しい問題で、社会生活に多大な影響を及ぼさない程度の新たな規制は仕方がないにせよ、次々現れる「無敵の人」のことを社会全体、日本国全体の問題として政治主導で国民的な議論をすべき時が来ているのかもしれない。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。著書『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)他。