2019年、京アニ放火事件をうけガソリン販売が厳格化された。総務省消防庁が作成したガソリン販売業者向けリーフレット[全国石油商業組合連合会配布](時事通信フォト)

2019年、京アニ放火事件をうけガソリン販売が厳格化された。総務省消防庁が作成したガソリン販売業者向けリーフレット[全国石油商業組合連合会配布](時事通信フォト)

 露店によっては発電機を使うのでガソリン(軽油やガスの発電機もある)を携行している店もある。8年前の2013年に京都の福知山で花火大会の大爆発事故があった。ベビーカステラの露店主が発電機用のガソリンが入った携行缶を圧抜きもせずに蓋を開け、気化したガソリンが噴出、他店もたこ焼きや焼きそばなど火の気が多いことも相まって大爆発を起こした。

「そりゃ調整ネジも回さないで入れっぱなしの携行缶開けたら吹き出しますよ、それも露店だらけなんでしょ、あちこちで火を使ってるし電球だって裸で吊るされてるんじゃ大爆発です。ガソリン(の引火点)はマイナス40℃以下ですから、いつでもどこでも引火する危険があるんです」

 この事故は3名が亡くなり59名が重軽傷となった。店主は2014年に禁錮5年の実刑となったが、取り返しのつかないこととはいえ事故は事故、決してわざと他人を無差別に殺そうとしてガソリンを犯罪に使ったわけではない。

「これも昔の話ですが、ガソリンなんか携行缶じゃなくても灯油に使うポリタンクとかでも挿れてあげてました。サラ金が燃やされたりして厳しくなりましたね」

「サラ金が燃やされた」というのはいまから20年前、青森県で2001年に起きた当時の消費者金融大手、武富士の弘前支店がガソリンで焼かれて従業員5人が死亡した大事件である。いまの若い子にはピンと来ないかもしれないが、1990年代までいわゆる「サラ金」と呼ばれる貸金業が跋扈、多くの有名テレビCMが連日流され、芸能人がイメージキャラクターとなり、当の武富士もVリーグに「武富士バンブー」という名のバレーボールチームを持っていた(2009年解散)。その武富士に借りた金を返済できなくなった男が逆恨みしてガソリン(この事件では厳密には混合ガソリン)で火をつけた。

「ポリタンクでガソリンを売れなくなったのもその時期だと思います」

 これも古い話だが、2003年に名古屋市でポリタンクにガソリンを入れた男が運送会社に人質をとって立てこもり自爆、人質の支店長と巻き込まれた機動隊員が亡くなった。これらの事件をきっかけに法整備がなされ、ガソリンの購入が厳しくなった。

「ただ現実はね。危険物なのは私らも資格を持つプロだから重々承知なんですが、仕事や生活で使う人たちもいるわけだから携行缶のお客に売らないわけにもいかないんですよ」

 もっともな話で、トラクターや自脱型のコンバインでいちいち自走して来いというのもガソリンスタンドが遠かったり、都市部の農家でも交通事情もあったりで日々の仕事となると難しいだろう。乗用田植え機に至っては原則的に公道走行できないし、手押しだからと耕うん機を延々スタンドまで押して歩くわけにもいくまい。チェーンソーやヘッジトリマーを持って市中をウロウロするのも別の意味で危ない。車で運ぶにしても作業のたびに(多くはタンク容量が少ないため)ガソリン切れでスタンドまで行くのは面倒だ。混合ガソリンを作らなければいけない場合もある。そもそも自動車販売店やバイクショップだって大手はともかく小さな個人店では昔ながらのグレーな保管体制の店も多い。部外者は事件が起きたからああしろ、こうしろといくらでも言えるが現実は直接給油以外の販売禁止なんて仕事では無理だ。

関連記事

トピックス

5月8日、報道を受けて、取材に応じる日本維新の会の中条きよし参議院議員(時事通信フォト)
「高利貸し」疑惑に反論の中条きよし議員 「金利60%で1000万円」契約書が物語る“義理人情”とは思えない貸し付けの実態
NEWSポストセブン
殺害された宝島さん夫婦の長女内縁関係にある関根容疑者(時事通信フォト)
【むかつくっすよ】那須2遺体の首謀者・関根誠端容疑者 近隣ともトラブル「殴っておけば…」 長女内縁の夫が被害夫婦に近づいた理由
NEWSポストセブン
曙と真剣交際していたが婚約破棄になった相原勇
《曙さん訃報後ブログ更新が途絶えて》元婚約者・相原勇、沈黙の背景に「わたしの人生を生きる」7年前の“電撃和解”
NEWSポストセブン
なかやまきんに君が参加した“謎の妖怪セミナー”とは…
なかやまきんに君が通う“謎の妖怪セミナー”の仰天内容〈悪いことは妖怪のせい〉〈サントリー製品はすべて妖怪〉出演したサントリーのウェブCMは大丈夫か
週刊ポスト
令和6年度 各種団体の主な要望と回答【要約版】
【自民党・内部報告書入手】業界に補助金バラ撒き、税制優遇のオンパレード 「国民から召し上げたカネを業界に配っている」と荻原博子氏
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン