国際情報

禁錮26年のハーバード大教授は「中国叩き」の生贄だったのか

ノーベル賞確実ともいわれた逸材だったが(AFP=時事)

ノーベル賞確実ともいわれた逸材だったが(AFP=時事)

 日本でも物議をかもしている中国政府による世界の学者・研究者集め「千人計画」にこっそり参加していたとして、ユダヤ系のハーバード大学教授がボストンの連邦裁から禁錮26年という重い判決を受けた。この年末の大ニュースは日本でも報じられたが、関係者の間では「当然の報いだ」という非難と「やりすぎだ」という同情が交錯している。事実はどうだったのか。

 渦中の教授はチャールズ・リーバー(62)。末期のリンパ腫に侵されているというから、判決が確定すれば獄死は間違いない。彼は「ナノテクノロジーのパイオニア」でノーベル賞も期待されていた「アメリカの宝」で、ベンチャー企業「ナノシス」と「ビスタ・セラピューティクス」を立ち上げた起業家でもあり、「二足の草鞋」で成功したスター科学者だった。

 事件を取材してきたボストンの地元紙記者はこう言う。

「リーバーは知人に、優秀な科学者たちと意見交換したい、名を売りたい、と話していたらしい。いまやハーバードのリーバー研究室で働く研究員の13人中10人は中国系といわれているから、中国人の頭脳は彼にとって貴重だったのだろう。リーバーはキャンパスからほど近い高級住宅地レキシントンに住んでいる。大学の給料だけでここにマイホームを購入するのは無理だ。それに、通常裕福なユダヤ系はハーバードのあるケンブリッジ南方のブルックレーンに住むことが多いが、リーバーはあえて中国人の多い地区を選んでいた。近所では、いつもにこやかでユーモアもある好人物と見られていたようだが……」

 裁判を見る限り、リーバー教授の罪状は言い逃れができない。秘かに履いていた「三足目の草鞋」は致命的だった。中国の企業スパイ養成機関といわれる武漢理工大学がオファーした「戦略的科学者」のポストに2012年から2015年まで就き、月5万ドル(約570万円)の給与のほか、15万8000ドル(約1800万円)の生活費、さらに150万ドル(約1億7000万円)かけた研究室を提供されていた。同教授は米国内の複数の機関からも多額の助成金を受けており、その条件として外国政府・機関から支援を受けた場合は報告する義務があったがそれを怠り、しかも内部調査を受けてもシラを切り通したのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
フレルスフ大統領夫妻との歓迎式典に出席するため、スフバートル広場に到着された両陛下。民族衣装を着た子供たちから渡された花束を、笑顔で受け取られた(8日)
《戦後80年慰霊の旅》天皇皇后両陛下、7泊8日でモンゴルへ “こんどこそふたりで”…そんな願いが実を結ぶ 歓迎式典では元横綱が揃い踏み
女性セブン
犯行の理由は「〈あいつウザい〉などのメッセージに腹を立てたから」だという
「凛みたいな女はいない。可愛くて仕方ないんだ…」事件3週間前に“両手ナイフ男”が吐露した被害者・伊藤凛さん(26)への“異常な執着心”《ガールズバー店員2人刺殺》
NEWSポストセブン