照ノ富士は「横綱の品格」をどう考える?(C)ゾルジャラガル
黙って土俵で見返す
〈2019年九州場所で幕下優勝を飾り十両へ復帰。大関経験者の序二段からの関取復帰はもちろん史上初。再十両場所で優勝すると、2場所で十両を通過。幕内に復帰した2020年名古屋場所では幕尻での復活優勝を遂げた。その5場所後には大関に復帰し、さらに2場所後には横綱昇進を果たした〉
幕尻で復活優勝したことで、世間からの注目度も一気に高まった。そんななかで決まって「昔は調子に乗っていたけど、今は落ち着いた」と言われる。私は理不尽なことや理にかなわないことを言われるのが、性格的に本当に嫌で、昔は嫌だと思ったことはすぐに口に出していた。この件に関しても本当は言い返してやりたかった。しかし、今は違う。男として、やっぱり飲み込まないといけないことも多々ある。そういうときは「黙って土俵で見返す」そんな考えでいる。
私はこれまでの人生のなかで、何事もあとから後悔することがなかった。イケイケだった自分が正しかったか正しくなかったかと問われれば、正しくなかったこともあったかもしれないが、それも含めてよかったんだと思っている。
怖いもの知らずだったし、調子に乗っていたと言われるが、今はいろんなことを経験して、いろんなことをわかっているんだから、それでいい。正しくなかったかもしれない過去の自分を否定したくない。
ただ変わるのは考え方だけで、信念が変わるわけではない。変わらない信念とは、相撲で絶対に負けないこと。大切な人を大切にすること。成長と共に考え方が変わっても、自分のなかで変わらないものだけもっていればいい。
(第3回につづく)
※週刊ポスト2022年1月1・7日号