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台湾で「豚肉」が大問題 「米国産の豚肉を食べると危ない」の認識広まる

(写真/Getty Images)

与党本部に「毒」の文字を貼り付ける、輸入再開に反対する人たち(写真/Getty Images)

 代表的なご当地グルメは、口に入れたとたんに熱々でジューシーな豚肉のスープが口いっぱいに広がる小籠包。気軽に海外旅行へ行けなくなって2年経つが、以前は旅行先の人気上位には台湾が常にランクインしていた。近さと、温かい人柄の国民性に加え、豊かな食文化が私たちの舌と胃袋を魅了してきた。

 そんな台湾で、小籠包の中の「豚肉」にまつわる大問題が世論を二分していることは、あまり知られていない。昨年12月、その議論を決着させるため住民投票まで行われた。現地在住の日本人ジャーナリストが解説する。

「最大野党の国民党が『アメリカ産豚肉の輸入再禁止』の賛否を問うたのです。国民党政権下の2006年、『痩肉精』と呼ばれる添加物を与えられたアメリカ産の豚肉を禁輸しました。ところが政権交代した民進党・蔡英文総統が2021年1月にこれを撤廃し、輸入を再開。それを再び禁止しようという案が出されたわけです」

「痩肉精」とは、動物用の医薬品「ラクトパミン」のこと。いわゆる成長促進剤の一種だ。家畜の体重を増加させたり、赤身肉の割合を増やすなどの効果があり、豚では北米や南米、アジアなどの26か国・地域で使用が認められている。

「しかし、健康被害を不安視し、『毒豚』と呼んで輸入しないよう訴える人たちは多い。台湾では、アメリカとの政治的な関係を重視する与党と、距離を取る野党のそれぞれの支持者たちが輸入を巡って真っ二つに割れました」(前出・日本人ジャーナリスト)

 昨年11月、ラクトパミン入り豚肉に反対する民間団体が、政府の安全基準を満たす10ppbのラクトパミンを動物に摂取させる実験を行ったところ、死亡率が上昇したと発表。「人間が長期的に食用として摂取すれば明らかに健康上に悪影響をもたらす」と結論づけた。

(写真/Getty Images)

豚の内臓が投げつけられた台湾議会の様子(写真/Getty Images)

 さらに、台湾における慢性的腎臓病の発症率は世界第3位、人工透析率が世界1位であることを挙げ、腎機能が低下している人がラクトパミンを摂取することの危険性を指摘する医師もいた。ちなみに、人工透析率の世界第2位は日本。他人事ではないのだ。

 台湾では、国会に相当する台湾立法院が、この「毒豚」を巡って文字通り“血を見る”争いになったことも。

「『毒豚』輸入再開に抗議する野党議員たちが大声を上げながら、壇上に立つ行政院長に向かって豚の心臓や腸、皮などの臓物を投げつけました。建物内に血生臭さが充満する中、与党議員たちは雨具を着用して内臓を避けたり、手に持っていたプラカードで“防戦”していました」(前出・日本人ジャーナリスト)

 投票の結果、「毒豚」再禁輸は否決されたが、51%対49%という超僅差。台湾ではいまでも“アメリカの豚肉を食べると危ない”という認識は広く共有されている。

※女性セブン2022年1月20・27日号

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