ビジネス

コロナ禍でも圧勝のアマゾン 「買い負け」日本との差はどこにあるか

1995年創業のアマゾン・ドット・コムは、世界各地50カ所を超える物流センターを持つ。日本法人は2000年スタート(イメージ、ANP/時事通信フォト)

1995年創業のアマゾン・ドット・コムは、世界各地50カ所を超える物流センターを持つ。日本法人は2000年スタート(イメージ、ANP/時事通信フォト)

 生活支援を必要とするフルタイム従業員が多いなど、雇用や労働環境についてたびたび非難されているインターネット通販大手の米アマゾン・ドット・コム。批判の一方で、世界の覇権を目指すアマゾンの物流システムには驚嘆するしかない。俳人で著作家の日野百草氏が、アマゾンがロジスティックの巨人としての力を発揮する背景と、買い負ける日本が学ぶべき方向性について探った。

 * * *
「アマゾンフレックス、いろいろ言われてますけど凄いシステムですよ」

 関東で一人親方として運送業を手掛けているドライバーが語ってくれた。彼はかつてアマゾンフレックス、いわゆるアマゾンの直接業務委託契約をしていた。そう聞くと、Uber EATSのような仕組みが思い浮かべるかもしれないが、軽貨物車両を所有していることが条件なので法律を無視したグループが参入する懸念はほとんどないとされている。

「デフォルトが『置き配』というのがアマゾン最大の武器です。ECサイトにおける売上拡大につながってます。また独自の配送アプリの開発で多くの荷物を短時間に誰でも配る事ができます。人間が配るものなのでセンスと体力次第ですけどね」

 通常の宅配は、配達員が届け先に荷物を手渡しするのが基本だが、玄関先や宅配ボックスなど指定の場所に荷物を置いて配達完了とするのが「置き配」だ。最近は多くの通販や宅配業者で採用されている仕組みだが、手渡しが基本で置き配はオプション。まず置き配が選択肢というのはアマゾンならではだ。もちろん批判もある。「いろいろ言われて」という部分は配達員も利用する側も重々承知だろう。それでも全世界で40万人の配送ドライバーがアマゾンの仕事を請け負っている。

「アマゾンフレックスは多量の荷物を効率よく配送できます。たまにとんでもないところに連れていかれますが(笑)、国内のあらゆる物流会社がありながら、どこも追いつける気配すらない。システムの進化は 配送員の収入をアップさせます。その環境を創り上げる仕組み、ビジネスデザインの秀逸さですね」

 筆者も同感である。アマゾン、本当に凄い。従来の大手宅配業者は基本的に営業所という物理的な拠点を軸に、配達員の手配をしてきた。それを専用アプリひとつで実行し人手と時間を削減している。そして筆者は思うのだ。こうしたアマゾンの戦略は本来、日本がすべきことだったはずと。アマゾンの裏にはアメリカの国を挙げての全面協力がある。官民の露骨なまでの協調、これは中国も同様だ。戦争は綺麗事では勝てない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト