ジュニアグランプリ(JGP)ファイナル優勝。史上最年少だった。2009年(写真/アフロ)

ジュニアグランプリ(JGP)ファイナル優勝。史上最年少だった。2009年(写真/アフロ)

 その後も進化は止まらない。同年の世界選手権で初優勝すると、翌2015年には歴代最高得点を更新してグランプリファイナルを3連覇した。一般の若者なら遊びたい盛りの20才前後の時期に、自宅とリンクを行き来するだけの生活を送った。見かねたオーサーコーチが、雑誌のインタビューでこんなことを語ったほどだ。

「劇場に行くのもいいし、もっと人生を楽しんでほしいと思うんです。休みらしい休みを取ったこともないかなと思うので、もっと冒険を追求するかたちで人生を生きてほしい」

 それでも羽生の「スケート・ファースト」の生きる道は揺るがなかった。

「“ムダな時間”を過ごしたことがあるのかな?って思います。だけど、普通の若者がやるようなことを“諦めた”のではなく、スケートを超えるものに出会わなかったのではないでしょうか。私もスケートは大好きだけど、彼のスケート好きにはかないません」(高橋さん)

 そんな羽生に、スケートの神様は試練を与える。平昌五輪を目前に控えた2017年11月、NHK杯の公式練習中に転倒し、「右足関節外側じん帯損傷」と診断された。当初は3〜4週間ほどで元に戻るとの診断だったが、腱と骨にも炎症があったため、回復に時間を要した。

 そして、その3か月後の2018年2月、痛み止めをのみ、ぶっつけ本番で臨んだ平昌五輪の舞台。ショートプログラムですべてのジャンプを完璧に決め、フリーでは演技構成点トップを叩き出し、2大会連続の金メダルを獲得した。この偉業は海外メディアでも大きく取り上げられ、羽生は世界のスーパースターの地位を不動のものにした。

 帰国後、地元仙台で行われた凱旋パレードでは、約10万8000人が祝福し、個人では史上最年少となる国民栄誉賞も受賞した。大会後のインタビューで羽生はこう語っている。

「(金メダルは)いろんなものを犠牲にして、がんばってきたごほうび」

(第5回に続く)

※女性セブン2022年2月17・24日号

ジュニア時代の羽生。プルシェンコに憧れて“マッシュルームカット”にしていた。2009年(写真/アフロ)

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全日本ジュニア選手権(2009年)2連覇。写真左から中村健人、羽生、宇野昌磨(写真/アフロ)

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東日本大震災後、荒川静香(写真右)らとともに募金を呼びかけた。2011年(共同通信社)

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オーサーコーチに師事した翌年、グランプリファイナルで初優勝を果たす。2013年(写真/GettyImages)

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