少女のような瑞々しさと透明感(番組公式HPより)
そんな深津といえば、数多くの代表作を持つ、言わずと知れた日本の名俳優である。ドラマ『踊る大捜査線』シリーズ(フジテレビ系)で広く認知され、数々のドラマのヒットに貢献。国内外で高く評価された映画『悪人』や『岸辺の旅』などの映画作品でも中核を担い、映像だけでなく舞台への出演も意欲的に重ねてきたのはよく知られているところだ。特に、劇作家・野田秀樹(66才)の手掛ける作品では、天海祐希(54才)、宮沢りえ(48才)、松たか子(44才)らと並んで幾度もヒロイン役に起用され、実年齢から大きく離れた役どころもこなしてきた。
こうした演劇の場での、よりパフォーマンス性が必要とされる演技アプローチは、今回のるい役にも間違いなく活きているのだろう。大阪でお世話になっている人々や恋の相手、初めて触れるものなどに対する細かな所作にるいの“幼さ”や“不慣れさ”が表れ、るいの言動の一つひとつにドキドキし、ハラハラさせられる。視線や声色一つから彼女の心情がありありと伝わってくるのだ。
とはいえ、るいもこれから年齢を重ねていくのだから、ここからが深津の本領発揮となることだろう。朝ドラでは、俳優の実年齢と役の年齢がかけ離れていることが“あるある”だが、演じる俳優も視聴者もそのキャラクターを受け入れなければならない。これをどれだけすんなり受け入れられるかは俳優次第。10代の俳優が40代を演じるのは、見た目の問題以上に本人に実経験がないのだから、リアリティが薄れてしまっても仕方がないかもしれない。しかし深津のように40代の俳優ならば、実際に本人も10代を経験してきたわけで、10代から年齢を重ねていく過程を無理なく演じられるのではないかと思う。
深津の俳優人生は優に30年を超えている。本作のるい役は、これまでに数多くの現場でキャリアを積んできた彼女の集大成と言えるものになるのではないだろうか。
【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。