感想戦では「エアポケットですね」と口にした

感想戦では「エアポケットですね」と頭を抱えた渡辺明王将(時事通信フォト)

 ただ、藤井竜王も終盤に最善手ではない手を指したので、渡辺王将にもワンチャンスがありました。藤井竜王が117手目に9三歩で王手をした。それが好手ではなかったので、もし渡辺王将が咎めていれば、逆転していたかもしれません」(松本氏)

 渡辺王将が藤井竜王の「最善手ではない手」を見抜けなかった理由について、松本氏はこう話す。

「読み抜けの原因は、渡辺王将が藤井竜王の力を信用していて、藤井竜王が打った瞬間に“これは好手じゃないか”と思ってしまったからではないか。これは将棋ではよくあることで、信用されているほうが勝つ。

 藤井竜王と渡辺王将の過去の対戦成績は(藤井竜王の)11勝2敗。相手が強くて自分が負けていると、一番肝心なところで相手の“強さ”を信用してしまう。そうなると相手が疑問手を指してきても、それを見抜けないということはよくあります。将棋界では昔から重大な読み抜けを“エアポケット”と言っていましたが、王将戦第3局の終盤ではまさにその“エアポケット”が生じてしまった」

 とはいえ、それだけ勝負が拮抗しているということでもある。年明けからの王将戦3連敗で調子を落としているとみられていた渡辺王将だが、他のタイトル防衛戦では復調の兆しもある。2月6日に開幕した棋王戦五番勝負の第1局では、挑戦者の永瀬拓矢王座(29)を140手で退け勝利した。永瀬王座は年明けの朝日杯将棋オープン戦で藤井竜王に勝利しており、そのことからもトップ棋士たちの実力に大きな開きがないことがよく分かる。

 かつて14歳年上の大先輩であり「天才棋士」と言われた羽生九段を相手に真正面から挑み、3連敗からの4連勝を成し遂げた渡辺王将。18歳年下の「若き天才棋士」を前に、再び己の“強さ”を信じることができるかが、勝敗のカギとなりそうだ。

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