羽生結弦の写真がプリントされたクリアファイルも、20枚ほど集めた。クリアファイルの価格は、中国では20~60元(約360~1080円)。普段は、毎日3時間ほど羽生関連の動画を視聴していて、万単位の写真をクラウド上に保管しているという。
「私のスマホには『羽生語録』が大量に保管してあるので、落ち込んだ友人を励ます時に、ゆづくんの言葉を使うこともあります。たとえば、『自分を高められるのは自分しかいない。この悔しさをバネに前に進んでいきたい』とかですね」
北京五輪は、開会式直前にチケット販売を特定の観客に限る方針を決定。一般客は、観戦できなくなった。
「本当はチケットを手に入れて、五輪会場まで見に行くつもりでした。今回はテレビの前で声援を送りましたが、きっと本人にも届いていたと信じています」
北京五輪4位という結果は、まったく気にしていないと言い切る。
「メダルを取れなかったことは、全然構いません。ゆづくんは、私の心のなかでは常に1番なので。外部の雑音なんか気にしないでほしい。私はずっとずっと応援します。ショートプログラムでは氷に穴がありましたが、試合後のインタビューで『北京五輪のリンクの氷はとても良かった』と言ってくれました。優しいし、度量があるなと思います。フリーでは4回転半に果敢に挑戦して、決して守りには入らなかった。最後まで挑戦を続けたゆづくんは、間違いなく勝者だと思う!」
中国では、楊さんのようなファンが数多くいる。大陸でも社会現象となっている“ゆづブーム”はしばらく続きそうだ。
【プロフィール】
西谷格(にしたに・ただす)/1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方新聞の記者を経て、フリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポート。主な著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』『ルポ デジタルチャイナ体験記』など。