北京五輪フィギュアスケート男子シングルで4位という結果となったものの、4回転半ジャンプの史上初認定を受けた羽生結弦(27)。中国のSNS・微博(ウェイボー)の検索トレンドにしばしばあがるなど、中国でも大きな注目を集めた。人気の理由は何か。ジャーナリストの西谷格氏が現地の中国人ファンに話を聞いた。
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江蘇省・南京市の大学でピアノを専攻しているという18歳女性の楊さん(仮名)は、2018年・平昌五輪での羽生結弦の演技を見て、ハマったという。ファンの間で“ピョン落ち”と呼ばれる現象だ。
「演技を見た瞬間、あまりの美しさに目を奪われました。ほかの選手の演技も見たんですが、一つ一つの動作の繋ぎ方だったり技の難易度だったり、ゆづくんだけが違って見えました。見る人に勇気を与えるような、心が震える演技でした。試合後、すぐに名前を検索しました」
羽生の演技を見た瞬間に感じる独特な魅力は、国境を越えるようだ。以来、羽生の存在は、楊さんの背中を押す存在となっているという。
「大学受験の時にピアノのレベルがなかなか上がらず、悩んでいたんです。でも、私はゆづくんのファンなのだと思ったら、ファンとしてしっかりしなきゃと自分を奮い立たせることができた。大学に合格できたのは、ゆづくんのおかげです。逆境のなかでこそ人は成長できるのだと、彼が教えてくれました」
春節には、両親から8000元(約14万4000円)ものお年玉をもらったという。お年玉の感覚が日本とは異なるとしても、比較的余裕のある家庭で暮らしているようだ。両親から経済的援助を受けながら、これまでに1万元(約18万円)以上“ゆづ活”に費やした。
「『羽生結弦大型写真集 光 −Be the Light−』、『蒼い炎』、『羽生結弦 未来をつくる』などのゆづくん関連の書籍は全部買いました。ゆづくんの言葉や考え方が分かるものは、手に入る限りすべて手に入れています。日本の新聞は中国のネットで買うと1部25元(約450円)ぐらいで手に入りますが、古いものだと100元(約1800円)ぐらいすることもあります。ネットでも見られますが、やはり紙面で見開きの大判で見るとテンションが上がります」