この世代には「オレたちが日本経済を支えた」(1949年生まれの元会社役員)という強烈な自負があるが、その影響は大きい。
企業では、大量採用した団塊世代の社員が管理職になる頃、ポストが足りずに部下のいない「担当課長」「担当部長」という役職が続々生まれた。
最も振り回されたのが年金制度だろう。団塊が年金の支え手だった時代は、豊富な保険料収入でサラリーマンの妻の「第3号被保険者」など国民皆年金制度が整備されたが、彼らの定年が近づくと、政府は慌てて年金支給開始年齢を65歳に引き上げ、65歳以降も働く人の年金をカットする「在職老齢年金制度」を導入した。受給者が多い団塊世代への年金支払いを減らすためだ。
団塊世代の高齢化とともに、年金制度は事実上の崩壊に向かっている。人間関係でもこの世代は他と異質だ。競争意識が旺盛で協調性に乏しいと指摘されることもある。現役時代は南海などでエースとして活躍し、「ベンチがアホやから野球ができへん」と発言して引退した江本孟紀氏(1947年生まれ)の同世代論である。
「この世代の良さは、競争を勝ち抜いてきたという信念に強さがある。人の手を借りなくても自分でやってきた。逆にいえば、わがままで自分勝手。球界の同級生は堀内恒夫、鈴木啓示、谷沢健一、福本豊……名前聞くだけで本当に仲悪そうでしょう(笑)。球団に媚びないからコーチで呼ばれない。でも評論家としては好き勝手なことをいうから面白くて人気がある」
そんな世代が、支えられる立場になり、現役世代は「1.8人で1人」を支えなければならない。大丈夫かと心配になる。
ただ、前出の阪本氏はこうも指摘するのだ。
「団塊世代は元気な人が多く、“人の世話になりたくない”とウォーキングやジム、ヨガに通うなど介護予防をする人が8~9割にのぼる。ここで多くの高齢者が要介護にならなければ、日本は変わるのではないか。2025年は団塊の世代が最後に世の中を変える機会になるかもしれません」
※週刊ポスト2022年3月4日号