西郷輝彦さんが挑戦した最先端治療PSMAとは?(時事通信フォト)

西郷が挑戦した最先端治療PSMAとは?(時事通信フォト)

 3回目の治療を終えた西郷は9月末に帰国した。親交の深かった喜劇俳優の大村崑(90)のもとにも、帰国後すぐに電話があったという。

「すごく明るい声で『ご心配をおかけしましたが、元気に帰ってきました』と報告してくれました。だから治療がうまくいってよかったなあと思っていたんです。実は関西テレビから『どてらい男』の同窓会の企画をやろうという話が進んでいて、一番熱心だったのが輝ちゃんだった。電話でもその話が出て、『カメラの前で会えますね。楽しみです』と言っていました」

 復帰公演も予定されていたほど元気なはずだった。しかし、PSAの数値は未だ高く、10月に検査をしたところがんが残っていることが判明した。窪田医師はこう推測する。

「CT検査でも、各臓器をきちんと確認すればがんが発見できるはずで、一般的に診断が難しいわけではありません。西郷さんは骨にも転移していたので、もしかしたらがんが消えたというのは、“骨転移の部分については消えた”という意味だったのかもしれません」

 西郷はPSAの数値が下がらないことについて、オーストラリア側から「治療を中止して日本で調べたらどうか」と提案されたこともYouTubeで明かしている。

「これも推測の域を出ませんが、治療の成果が実は芳しくなく“これ以上、治療効果は望めないこと”をやんわりと伝えた可能性もあります」(窪田医師)

 西郷は過去、「親の看取り方」をテーマにした本誌・週刊ポスト(2016年10月14・21日号)のインタビューで、死についてこんな価値観を打ち明けていた。

「両親の葬儀を通じて、“死んだら終わりだ”と実感しましたね。生きているうちが華だなとつくづく思います。1年でも長く生きることが、家族のためだなと」

 全力で生きようとした西郷は一方で、渡豪した目的についてユーチューブで「前立腺がんで悩んでいる人たちに、まずは私がこの体で体験してお伝えする」ことも挙げていた。

 最期までファンのために尽くしたスターだった。

(了。前編を読む)

※週刊ポスト2022年3月11日号

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