例えば、和田医師は「心身ともに健康なうちは運転免許の返納はすべきではない」と説く。
「筑波大学などの研究チームが愛知県の65歳以上の男女2800人を追跡調査したところ、『運転をやめていた人』は『運転を続けていた人』に比べて、10年後には要介護となるリスクが2.09倍になっていたという結果が出ました。家にこもり、人と会う機会が減ってしまうことが、運動機能や脳機能を簡単に衰えさせてしまうのです」
さらにこの調査では、運転をやめてからは電車やバスなどを利用していたという人でも、運転を続けた人に比べて要介護リスクが1.69倍も高いという結果が出ている。
近年は高齢者による交通事故がことさら大きく取り上げられ、免許の自主返納が盛んに呼びかけられているが、この風潮に和田医師はこう憤る。
「人口10万人当たりの年齢層別で見ると、最も事故を起こしているのは16~19歳で、次が20~24歳。その他の年代と比較しても、高齢者の事故率が高いとはいえません。データにもとづいて合理的に考えると、高齢者から免許を取り上げることに正当性はないのです」
(後編につづく)
※週刊ポスト2022年3月11日号