ロシアが保有する核弾頭
爆撃機からか潜水艦からか
今後の戦況はなお予断を許さない。ロシア軍はキエフ包囲網を狭めているが、たとえ3月中に首都が陥落しても、米国などの支援を受けるウクライナ軍は各地でゲリラ戦を続ける可能性が高い。ロシアにはウクライナ全土を占領するだけの兵力はなく、そうなれば戦況は一層泥沼化する。まさにロシアの将軍たちが想定していた事態だ。プーチン氏にすれば、「核の限定使用」を決断せざるを得ないXデーに限りなく近づく。
別掲図のようにICBM、SLBMに装備されるなど、ロシアが保有する核弾頭は6000発を超える。長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎・副センター長が語る。
「ロシアの核戦力は米英などと異なり、すべてが公表されておらず不透明な部分が多いが、アメリカの専門家が蓄積したデータなどを総合すると、すぐ使えるように作戦配備されているのは約1600発。ロシアも冷戦終結直後は核保有数を減らしていましたが、2020年から軍用核弾頭が増えています」
懸念の募るデータとしか言いようがない。では、最悪の場合、どのような核兵器が使われる危険があるのか。
核兵器は小型化、低出力化が進み、ロシアは比較的短い射程のミサイルに小型低出力の核弾頭を装備しているとされる。低出力とはいえ、一発で広島型原爆(推定16キロトン)に迫る爆発力だ。前出・小泉氏の見方だ。
「NATOがこれまでのロシア軍の訓練を評価したところでは、空中発射巡航ミサイル、つまり爆撃機から発射される巡航ミサイルを使うのではないかとの見方が有力です。また、17年に出されたロシア海軍のドクトリン文書では、エスカレーション抑止のための核攻撃を海軍の任務として挙げていることから、潜水艦から巡航ミサイル発射の可能性もあります」
目標や被害の規模も懸念される。
「ロシアの将軍たちが書いたものを読むと、標的は人口密集地であったり、重要産業地帯であったり、明確にはわからない。脅しだけが目的なら黒海上空で1発だけ落とすとか、ウクライナの誰も住んでいない平原に落とすことも考えられる」(同前)