楽天から10億円の寄付を引き出す
サイバー民兵を率いるミハイロ・フョードロフ副首相兼デジタル転換相(Getty Images)
さらにフョードロフは、ロシアでビジネスを展開する欧米側の企業のトップに連絡し、ロシアでのビジネスを停止するよう要請。要請にあたっては公式文書を公開し、国際世論の注目度を高めている。
楽天が提供する無料通信アプリのViberはロシアなどでも使われているが、フョードロフは楽天にもサービス停止をSNS上で要求。結局、楽天は要請に応じなかったが、その代わりに、ウクライナに10億円を寄付することになった。その資金がロシアとウクライナの戦いに注がれていき、戦況にも影響していくことになる。
SNS上でこうしたやり取りを報告することで、企業にプレッシャーを与えることもできる。SNSに書かれたら、侵略行為で人権侵害が続くウクライナからの切実な要請を無視するわけにはいかないからだ。
さらにフョードロフは、無料メッセージングアプリであるTelegramのチャンネルを開設し、チャンネルに登録している30万人以上のハッカーやプログラマーなどにサイバー工作を実施するよう指示を出している。
実は、このようにインターネットで「愛国者」のハッカーらを妨害工作に巻き込むのは、もともとロシアが得意としていた。例えば、ロシアが2007年にエストニアに激しいサイバー攻撃を行なって国家機能を麻痺させたことがあったが、その際には、ロシア国内でインターネットの掲示板などを使って攻撃先のサーバーのIPアドレスや、サイバー攻撃の実施方法の手順などを情報機関が掲載していた。今回、それと同じことをウクライナがロシアに対して行なっているのは皮肉なことだ。
ウクライナ側のサイバー空間での攻勢はこれに止まらない。例えば、Telegramで、ロシアに進出しているドイツの卸売店「メトロ」を撤退させる作戦を行ない、IT軍の兵士らに、同社のフェイスブックのページに批判メッセージを送るよう英語の文面まで掲載している。
またある投稿では、ロシアのニュース機関のYouTubeチャンネルを凍結させるべく、YouTubeに「不適切なコンテンツ」であると通報する方法を指南している。
ツイッターでは、破壊された街の様子や、住民を助けるウクライナ兵の写真を掲載したり、世界に向けて現場の惨状を伝えている。もちろん「ロシアよ、出ていけ」といった投稿も多く見られる。
フェイスブックでも同様の投稿が掲載されているが、それ以外にも、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とセルゲイ・ショイグ国防相の電話の会話を盗聴したと思われる音声も公開されている。