不幸になる女と幸せになる女の基準
『これを愛と呼ぶのなら』の作者である都先生は2011年に「beyond the line」でデビューされましたが、2017年頃から作風が激変します。
言葉は悪くなりますが、初期の都先生の女性キャラは男性目線で見るとクソ野郎ばっかりでした。「恋のためならどんなことをしても女の子は無罪!」とでも言いたげで、女性が起こしたクソみたいなピンチも颯爽と王子様が現れて解決してくれるような話といえば分かりやすいでしょうか。
しかし2017年の頃から、その作風が変わりました。たとえ女であっても、ある条件を満たさない女には不幸の鉄槌を叩きつける。そしてその都先生の信念が表れた作品こそ『これを愛と呼ぶのなら』でしょう。
本書には18本のエピソードが収録されておりますが、そのうち12本までが女性にとって不幸な終わりを迎えます。逆にいえば6本はハッピーエンドになるのですが、都先生は「不幸になる女」と「幸せになる女」を明確にある基準で分けているのでしょう。
その基準こそが「自分の気持ちを正直に話すことができるかどうか」。
どれほど努力しようと、どれほど健気だろうと、自分の気持ちに正直ではない女には不幸の鉄槌を叩きつける。6人の女性は自分の気持ちを正直に話したからこそ幸せになれたのです。
それでは君恵はどうなるのでしょうか。
彼女は「これは酒の勢い」と自分に嘘をつき続けました。そんな彼女を待っているのは、きっと不幸な物語でしょう。
【プロフィール】
上野さん/Twitterのフォロワーは33万人超。ラブホテルスタッフとして見た人間模様をもとにTwitterでつぶやいた文章が人気に。現在はテレビドラマにもなったマンガ『ラブホの上野さん』の原案や恋愛コラムの執筆など、幅広く活躍中。
※女性セブン2022年4月7・14日号