ビジネス

改札なしの「信用乗車」は広がるか 広島電鉄はICリーダー活用で全扉乗降も

路面電車に革命を起こしたとまで言われる広電5000形グリーンムーバー。低床車は、路面電車のスタンダードになりつつある(2012年撮影:小川裕夫)

路面電車に革命を起こしたとまで言われる広電5000形グリーンムーバー。低床車は、路面電車のスタンダードになりつつある(2012年撮影:小川裕夫)

 ヨーロッパ旅行で鉄道を利用したとき、改札がないことに驚いた経験がある人もいるだろう。それでも皆が切符をきちんと購入しており、乗客が乗車券を自己管理するこの方式は「信用乗車」と呼ばれる。ライターの小川裕夫氏が、ICリーダーの積極的導入で事実上の信用乗車での運用が広まりつつある広島電鉄についてレポートする。

 * * *
 東京都を走る都電荒川線や東急世田谷線、熊本県熊本市を走る熊本市電などは均一運賃制を採用している。つまり、一駅の移動だけでも、端から端まで乗り通しても一乗車分の運賃だけを支払う。

 こうした均一運賃制のメリットは、乗車時に運賃の支払いを済ませるので降車時に運賃を精算する必要がないことだ。運賃を先払いすれば、どの扉からでも降車できる。これなら通勤・通学のラッシュの時間帯でも乗降がスムーズになり、それが駅での停車時間を短縮させる。

 一方、乗車する距離に応じて運賃が高くなる距離制、乗車した区間に応じて運賃が変動する区間制といった運賃制度もある。そうした距離制・区間制を採用している鉄道で、駅で改札業務・運賃収受をしていない場合は、一般的に後ろから乗車して前から降車する際に運賃を支払うシステムを採用していることが多い。

 広島電鉄(広電)は、広島県の広島市・廿日市市を中心に路面電車やバスを運行する事業者として知られる。広電は約19.0キロメートルの軌道線と呼ばれる区間と、路面電車がそのまま乗り入れる約16.1キロメートルの鉄道線があり、これらを合わせると国内最大の路面電車ネットワークを有する。

 広電は単に広大な路線網を有するというだけではなく、先取的な取り組みで国内の路面電車事業者をリードしてきた存在でもある。

 例えば、広電は定時運行を確保するために広島県警と協力。県警は軌道内の自動車走行を禁じているほか、右折できる場所を限定。これらの施策により、路面電車の運行を阻害しない道路・交通のルールづくりが広まった。それまで道路(自動車)の邪魔者とされてきた路面電車だったが、広島では「路面電車が主役」という概念が定着する。

 また、広電は車両の改良にも積極的で、一昔前の「のんびり走る」といったイメージを覆した5000形を1999年に登場させている。

 5000形はグリーンムーバーという呼び名で市民に親しまれ、そのスタイリッシュでスピード感のある外観は鉄道ファンや観光客を魅了した。好評な声を集めたことを追い風に、2004年には後継車となる5100形が登場。5100形はグリーンムーバーmaxと呼ばれた。

関連記事

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン