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鉄道車両の余生 塗り替えなしに地方を走ることも増加

JR五能線を普通電車として走っていた「キハ40」は2022年3月から兵庫県の北条鉄道で往時のカラーリングのまま運行開始。写真は岩木山を背に五能線を走る2016年の様子(時事通信フォト)

JR五能線を普通電車として走っていた「キハ40」は2022年3月から兵庫県の北条鉄道で往時のカラーリングのまま運行開始。写真は岩木山を背に五能線を走る2016年の様子(時事通信フォト)

クラウドファンディングで「キハ40」譲渡費用を調達

 例えば、兵庫県小野市の粟生駅から加西市の北条町駅を結ぶ北条鉄道は、JR東日本からキハ40形を購入した。キハ40は、以前に青森県と秋田県を結ぶ五能線を走っていた。

 北条鉄道は、キハ40を譲り受けるための費用をクラウドファンディングで調達。目標は1000万円だったが、1300万円を超える支援が集まった。クラウドファンディングに応じた人の多くは、北条鉄道の沿線に住んでいる住民や以前に住んでいた旧住民だが、「新天地でキハ40が走る姿を見たい」と期待した東北にゆかりのある人もいる。

 北条鉄道に活躍の場を移したキハ40は、当時のままの車体カラーリングで走っている。クラウドファンディングという手法を使って多くの人と縁を深めたこともあり、古参の鉄道ファンや五能線沿線に在住者たちなどが北条鉄道を訪問するという地域間交流も生まれている。

 近年、映画やアニメのファンが作品の舞台を旅行する現象が生まれた。これは聖地巡礼と呼ばれる。

 譲渡車が当時のカラーリングのまま走ることで、ファンや旧沿線住民が乗りに訪問する。その現象は、鉄道版の聖地巡礼といえかもしれない。

 いくら沿線外からの利用者を呼び込んでも、それによって経営を劇的に好転させることはないだろう。中古車両は、あくまでも鉄道事業者が沿線住民の足として使うために購入したに過ぎない。

 しかし、鉄道事業者は余分な手間や費用をかけているわけではないのに、中古車両を購入したことで沿線外から利用者を呼ぶ効果を期待できる。沿線外需要といっても微々たるものかもしれない。それでも、座して死を待つわけにはいかない。生き残りのために、できることはやる。そんな気概も感じられる。

 コロナ禍や少子高齢化で苦しむローカル線の先行きは決して明るいとは言えないが、譲渡車が地方で奮闘を続けることは微かな光明なのかもしれない。

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