スポーツ

佐々木朗希、投げなかった高校最後の夏 当時の捕手「先生の判断は正しかった」

佐々木の高校時代の試合には全国から報道陣が詰めかけていた(撮影/藤岡雅樹)

佐々木朗希の高校時代の試合には全国から報道陣が詰めかけていた(撮影/藤岡雅樹)

 ロッテ3年目の佐々木朗希(20)の衝撃の快投。今となっては大船渡高校時代、甲子園行きが懸かった試合で連投回避のため佐々木を登板させなかった國保陽平監督の決断も称賛されている。2019年、佐々木を擁した大船渡は35年ぶりの甲子園を懸けて岩手大会決勝に臨んだ。ところが、花巻東との試合で國保監督は佐々木をマウンドに送らず、2対12で大敗し、甲子園行きの切符を逃したのだ。“あの夏”の判断の裏側には何があったのか―─。ノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。【文中敬称略。前後編の後編。前編から読む

 * * *
 あの夏以降、私と國保も冷戦状態が続いていた。2019年の秋季大会では私の質問にだけ無言を貫き、囲み取材後、彼のあとを追うと岩手高野連の本部に逃げ込まれてしまう。

 國保に変化があったのは、花巻東との決勝からちょうど1年後、2020年7月の岩手大会初戦だった。

 この日、國保は身振り手振りで選手に指示し、メンバーのほとんどを起用した。敗れはしたものの、憑き物が落ちたように晴れやかな表情をしていた。試合後、久しぶりに声をかけるとあの日の真相を初めて語り出した。

「(佐々木を)壊しちゃいけないというプレッシャーがあった。世界の野球の歴史を変えるかもしれない才能を、壊さずに次のステージへ繋げなければならない。そう思っていました。朗希を登板させないことは当日の朝に、歩き方や朗希の表情を見て決めました。高校3年間で一番、ケガのリスクがあるな、と」

 試合を放棄したという指摘には強く否定したが、選手への説明が不足していたのは事実だろう。

「事前に佐々木本人に相談したら、『投げたいです』と言うのは明らかだった。野手に伝えたら、『僕らがサポートするので投げさせてやってください』というに決まっています。一言でも相談したら、止められなくなると思いました」

 國保は自分ひとりだけが悪者になることを選び、すべての責任を背負い込んだのだ。それにしても、あれだけ拒絶していた私の取材になぜ答える気になったのか。

「私も当時はムキになっていた部分もあるんです。あれだけ詰めかけた報道陣も、今では他に誰も来ませんから……」

 ならば携帯電話の番号を教えてほしいと伝えると、國保は一笑に付した。

「僕は2019年に登録した記者の電話番号をすべて着信拒否にした(笑)。公式戦に来ていただけたら、取材には応じます」

関連キーワード

関連記事

トピックス

永野芽郁
《不倫騒動の田中圭はベガスでポーカー三昧も…》永野芽郁が過ごす4億円マンションでの“おとなしい暮らし”と、知人が吐露した最近の様子「自分を見失っていたのかも」
NEWSポストセブン
中居正広
中居正広FC「中居ヅラ」の返金対応に「予想以上に丁寧」と驚いたファンが嘆いた「それでも残念だったこと」《年会費1200円、破格の設定》
NEWSポストセブン
協会との関係は続く?(時事通信フォト)
《協会とケンカ別れするわけにはいかない》退職した白鵬が名古屋場所で快進撃の元弟子・草野に連日ボイスメッセージを送ったワケ
週刊ポスト
「木下MAOクラブ」で体験レッスンで指導した浅田
村上佳菜子との確執報道はどこ吹く風…浅田真央がMAOリンクで見せた「満面の笑み」と「指導者としての手応え」 体験レッスンは子どもからも保護者からも大好評
NEWSポストセブン
石破首相と妻・佳子夫人(EPA=時事)
石破首相夫人の外交ファッションが“女子大生ワンピ”からアップデート 専門家は「華やかさ以前に“上品さ”と“TPOに合わせた格式”が必要」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
中村芝翫の実家で、「別れた」はずのAさんの「誕生日会」が今年も開催された
「夜更けまで嬌声が…」中村芝翫、「別れた」愛人Aさんと“実家で誕生日パーティー”を開催…三田寛子をハラハラさせる「またくっついた疑惑」の実情
NEWSポストセブン
ノックでも観客を沸かせた長嶋茂雄氏(写真/AFLO)
《巨人V9の真実》王貞治氏、広岡達朗氏、堀内恒夫氏ら元同僚が証言する“長嶋茂雄の勇姿”「チームの叱られ役だった」
週刊ポスト
現場となったマンホール
【埼玉マンホール転落事故】「どこに怒りを…」遺族の涙 八潮陥没事故を受けて国が自治体に緊急調査を要請、その点検作業中に発生 防護マスク・安全帯は使用せず
女性セブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《秘話》遠野なぎこさんの自宅に届いていた「たくさんのファンレター」元所属事務所の関係者はその光景に胸を痛め…45年の生涯を貫いた“信念”
週刊ポスト
政府備蓄米で作ったおにぎりを試食する江藤拓農林水産相(時事通信フォト)
《進次郎氏のほうが不評だった》江藤前農水相の地元で自民大敗の“本当の元凶”「小泉進次郎さんに比べたら、江藤さんの『コメ買ったことない』失言なんてかわいいもん」
週刊ポスト
川崎、阿部、浅井、小林
女子ゴルフ「トリプルボギー不倫」に重大新局面 浅井咲希がレギュラーツアーに今季初出場で懸念される“ニアミス” 前年優勝者・川崎春花の出場判断にも注目集まる
NEWSポストセブン
6年ぶりに須崎御用邸を訪問された天皇ご一家(2025年8月、静岡県・下田市。撮影/JMPA)
天皇皇后両陛下と愛子さま、爽やかコーデの23年 6年ぶりの須崎御用邸はブルー&ホワイトの装い ご静養先の駅でのお姿から愛子さまのご成長をたどる 
女性セブン