佐々木の高校時代の試合には全国から報道陣が詰めかけていた(撮影/藤岡雅樹)
意外に感じるかもしれないが、2019年のドラフトでセ・リーグの6球団は佐々木を指名していない。巨人、ヤクルト、阪神は奥川恭伸、中日は石川昂弥、広島は森下暢仁、DeNAは森敬斗を1位指名した。佐々木を指名したのは日本ハム、楽天、ロッテ、西武のパ・リーグ4球団。抽選でロッテが当たりくじを引き当てた。
佐々木は大船渡高3年の2019年春に日本代表候補による研修合宿の紅白戦で、163キロを記録して「令和の怪物」と騒がれた。この年は奥川、石川、森下、オリックスに「外れ1位」で入団した宮城大弥と好素材が集まったドラフトだったが、佐々木を指名するセ・リーグの球団が1つもなかったことは意外に感じる。
在京球団のスカウトは、当時をこう振り返る。
「佐々木の能力は申し分ないです。ただ身体の線が細く、エンジンを制御できていなかったので、一本立ちするまで時間がかかるという見方が多かった。一方で奥川は完成度が高かったので早いうちに頭角を現わすことは予測できました。セ・リーグの球団は粗削りな投手より、全ての能力が一定の基準より高くまとまっている投手を好む傾向があります。結果的に佐々木を指名する球団はセリーグではいなかった」
スポーツ紙記者は「佐々木はロッテに入団できてよかったと思います」と断言する。
「入団1年目に球団の育成方針で実戦に一度も登板させず、1軍に帯同するという異例のプランで体力づくりに専念させた。『過保護すぎる』と危惧する声が上がりましたが、今の活躍を見れば球団の決断は正解だったと言えるでしょう。巨人や阪神などの人気球団では“物言うOB”も多く、こうした育成はできなかったはずです」
高卒3年目で「伝説の投手」になろうとしている佐々木。球界を代表する大エースへの階段を駆け上がる姿を野球ファンは楽しみにしている。
代表での 佐々木と奥川(撮影/藤岡雅樹)
森下は東京五輪代表としても活躍(時事通信フォト)
宮城は昨年のオリックス優勝に貢献した(時事通信フォト)