死の直前、東京都足立区の民家の庭で尾崎は泥酔し、全裸で倒れていた。彼の死後、ここに花を手向けるファンが後をたたなかった。その後、家主は自宅の一部を開放。2011年に取り壊されるまでの19年間、「尾崎ハウス」と呼ばれ全国からファンが集まった

死の直前、東京都足立区の民家の庭で尾崎は泥酔し、全裸で倒れていた。彼の死後、ここに花を手向けるファンが後をたたなかった。その後、家主は自宅の一部を開放。2011年に取り壊されるまでの19年間、「尾崎ハウス」と呼ばれ全国からファンが集まった

 1987年7月にライブツアーを再開したものの、スターであり続けることの重圧は大きかったのだろう。9月には急病により全国ツアーを中断、同年12月には覚醒剤取締法違反で逮捕される。

 1988年9月に4枚目のアルバム『街路樹』がリリースされるまで、3年の歳月を要し、5枚目のアルバム『誕生』(1990年11月)のリリースには、さらにもう2年かかった。2年間で3枚のアルバムを作り上げていた10代の頃に比べると、曲を生み出す葛藤がいかに大きかったかがうかがえる。

曲のカバーで尾崎の世界観と向き合う

 加藤は『I LOVE YOU』をカバーし、歌手として尾崎の世界観と向き合った。

「この曲は、ひとりぼっち同士が、この広い宇宙の中で愛し合う、という内容なんです。漠然と言葉にできなかった孤独を“捨て猫”と表現しています。温かくやさしく、ストレートに愛を伝えながらも、人間はひとりぼっちだと歌っています。公園で子供をあやしているお母さんも、仲間に囲まれている人も、本人にしかわからない孤独はある。尾崎さんの曲は、誰もが抱える孤独に寄り添っているんだと思います」

 尾崎の訃報は、加藤がパリでのコンサートを終えて帰国し、成田空港にいるときに飛び込んできたという。

「1992年は、私も出演した、宮崎駿監督のアニメ映画『紅の豚』の公開や、夫(故・藤本敏夫さん)の参議院選出馬など、さまざまな出来事があり、私の人生でも波乱にとんだ一年でした」 

 尾崎の早すぎる死も、そういう大きな事件の1つとして、加藤の人生に深く刻まれているという。

尾崎豊の『I LOVE YOU』のカバー曲を収録

尾崎豊の『I LOVE YOU』のカバー曲を収録

【プロフィール】
加藤登紀子(かとう・ときこ)/1943年生まれ。1966年デビュー。作詞家、作曲家、女優、歌手として活躍。代表作は『百万本のバラ』『知床旅情』ほか多数。尾崎豊『I LOVE YOU』のカバー曲を収録したアルバム『SONGS うたが街に流れていた』(ユニバーサル)が発売中。

取材・文/前川亜紀

※女性セブン2022年5月5日号

関連記事

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン