ライフ

今の時代、真に受けるとアウトなことわざ&慣用句について

昨年6月、LGBT法案成立を求めて行われたデモ(AFP=時事)

昨年6月、LGBT法案成立を求めて行われたデモ(AFP=時事)

 生き方も「アップデート」が求められる時代。先人の教えを真に受けてはアウトの場合もある。コラムニストの石原壮一郎氏が会話劇仕立てで解説する。

 * * *
「ごめんよ、ご隠居さん、いるかい」

「おお、熊さんじゃないか。どうしたんだい、あわてて?」

「どうしたもこうしたも、いやね、ご隠居さんは言葉に詳しいってもっぱらの噂だから、教えてもらおうと思ってきたんですよ」

「ほうほう、それは光栄だね。どういうことを知りたいんだい」

「飯屋のおはな坊のヤツが、言うんですよ。熊さんはジェンダー意識が遅れてる、差別的な言葉を平気で使うミソジニストだ、もっとアップデートしなさいって」

「そりゃ、おだやかじゃないな。近ごろの娘っ子は、すぐそうやって男を差別するからね」

「ところで、ご隠居さんちの庭のブドウ、今年はたわわに実ってますね」

「喝! 言ってるそばから迂闊なヤツじゃ。『たわわに実る』なんて言ってはいかん」

「だ、だめなんですかい。おいらは別にヘンな意味で言ったわけじゃねえんですけど」

「ヘンなつもりがあろうがなかろうが、本当に悪い意味を含んでいようがいまいが、批判する側にとっては関係ない。大事なのは、攻撃する口実があるかどうかじゃ」

「わかりやした。ほかに言わないほうがいい言葉にはどんなのがありやすか」

「昔からのことわざには、今の時代にはふさわしくないものがたくさんあるな。たとえば、ジェンダー平等やルッキズムの点で問題があるのは『悪女の深情け』『色の白いは七難隠す』『男は度胸、女は愛嬌』『女子と小人は養い難し』『あばたもえくぼ』あたりじゃな」

「へー、『悪女の深情け』なんて、男女関係の機微や人生を肯定しようという姿勢が感じられる秀逸なことわざだと思うんですけどね」

「熊さん、なかなかいいことを言うね。反論したくなる気持ちはよくわかる。しかし、批判してくる側はハナから人の意見を聞く気はない。自分が腹を立てているのも郵便ポストが赤いのも、みんな男性社会が悪いと叫んで溜飲を下げたいだけじゃからな」

「なんか気の毒ですね。女子と小人はとはよく言ったもの……おっといけねえ」

「夫婦についてのことわざにも、要注意なものは多い。『夫唱婦随』や『亭主の好きな赤烏帽子』は家父長制の象徴で、『大根と女房は盗まれるほどよい』は女房をモノ扱いしていると言われるじゃろう。『女房と畳は新しいほうがいい』なんて言ったら即刻離縁じゃな」

関連キーワード

関連記事

トピックス

手指のこわばりなど体調不安を抱えられている(5月、奈良県奈良市
美智子さま「皇位継承問題に口出し」報道の波紋 女性皇族を巡る議論に水を差す結果に雅子さまは静かにお怒りか
女性セブン
ちあきなおみ、デビュー55周年で全シングル&アルバム楽曲がサブスク解禁 元マネジャー「ファンの声が彼女の心を動かした」
ちあきなおみ、デビュー55周年で全シングル&アルバム楽曲がサブスク解禁 元マネジャー「ファンの声が彼女の心を動かした」
女性セブン
菅原一秀(首相官邸公式サイトより)と岡安弥生(セント・フォース公式サイトより)
《室井佑月はタワマンから家賃5万円ボロビルに》「政治家の妻になると仕事が激減する」で菅原一秀前議員と結婚した岡安弥生アナはどうなる?
NEWSポストセブン
「マッコリお兄さん」というあだ名だった瀬川容疑者
《川口・タクシー運転手銃撃》68歳容疑者のあだ名は「マッコリお兄さん」韓国パブで“豪遊”も恐れられていた「凶暴な性格」
NEWSポストセブン
民主党政権交代直後の政権で官房長官を務めた平野博文氏
【「年間約12億円」官房機密費の謎】平野博文・元官房長官 民主党政権でも使途が公開できなかった理由「自分なりに使い道の検証ができなかった」
週刊ポスト
『EXPO 2025 大阪・関西万博』のプロデューサーも務める小橋賢児さん
《人気絶頂で姿を消した俳優・小橋賢児の現在》「すべてが嘘のように感じて」“新聞配達”“彼女からの三行半”引きこもり生活でわかったこと
NEWSポストセブン
NEWS7から姿を消した川崎アナ
《局内結婚報道も》NHK“エース候補”女子アナが「ニュース7」から姿を消した真相「社内トラブルで心が折れた」夫婦揃って“番組降板”の理由
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【厳戒態勢】「組長がついた餅を我先に口に」「樽酒は愛知の有名蔵元」六代目山口組機関紙でわかった「ハイブランド餅つき」の全容
NEWSポストセブン
今シーズンから4人体制に
《ロコ・ソラーレの功労者メンバーが電撃脱退》五輪メダル獲得に貢献のカーリング娘がチームを去った背景
NEWSポストセブン
真美子夫人とデコピンが観戦するためか
大谷翔平、巨額契約に盛り込まれた「ドジャースタジアムのスイートルーム1室確保」の条件、真美子夫人とデコピンが観戦するためか
女性セブン
「滝沢歌舞伎」でも9人での海外公演は叶わなかった
Snow Man、弾丸日程で“バルセロナ極秘集結”舞台裏 9人の強い直談判に応えてスケジュール調整、「新しい自分たちを見せたい」という決意
女性セブン
亡くなったシャニさん(本人のSNSより)
《黒ずんだネックレスが…》ハマスに連れ去られた22歳女性、両親のもとに戻ってきた「遺品」が発する“無言のメッセージ”
NEWSポストセブン