長年にわたり現像やデジタル化を担ってきた東映ラボ・テックの技師、根岸誠氏(撮影/藤岡雅樹)
──リマスターで画面が鮮明になることによって、当時は作り手が「これは見えないだろう」と思っていたものが見えてしまうこともありますよね。
根岸:美術のディテールなど、製作意図として、明らかにこれは見せたくないんだろうなという部分は見えなくしています。
当時の技術で「こうやって撮影すれば、あれは見えないな」と思って撮影しているのは、見ればわかります。
ただ、すみずみまで全て調整しきるのは、なかなか難しい。ビジネスという側面もある以上、時間を無尽蔵にはかけられないわけです。それでも可能な限り、調整をしっかり重ねたいと思っています。
【プロフィール】
根岸誠(ねぎし・まこと)/1948年生まれ、群馬県出身。東映ラボ・テックにて「突入せよ!『あさま山荘』事件」などでテクニカルコーディネーターを務める。2017年に文化庁映画賞受賞。現在は東映デジタルラボ株式会社テクニカルアドバイザー。2022年2月の映画のまち調布シネマフェスティバル2022にて功労賞を受賞。
【聞き手・文】
春日太一(かすが・たいち)/1977年生まれ、東京都出身。映画史・時代劇研究家。
※週刊ポスト2022年6月3日号