「まだ僕は“武器”を持っていない」
木島隆一は「声の幅」が声優としての武器だという(写真/五十嵐美弥)
挫折を乗り越え、転機となる作品への出演を実力で次々と掴んできた。過去に演じたキャラクターの声を聴き比べると、その演技の幅に本当に驚かされる。まさに「この声とこの声は同じ人なの!?」とつい言いたくなるほどだ。しかし、その演技の幅というのが、声優として生きていくうえでの悩みに絡んでくるという。
「私は声の幅が結構ある方で、小さい子からおじいさんまでいろいろな役を任せてもらってきました。しかし、逆に自分の武器として、その幅の広さに頼ってしまうんです。例えば前情報ゼロの新しい作品を視聴者の方が観て“あ、この声、〇〇さんだ!”と気づき、声とキャラクターのイメージがぴったりということがあると思うんです。
でも、私にはまだそれがなく、“木島隆一じゃなきゃいけない声”がないんです。幅の広さも確かに武器のひとつではあると思います。現場で“この役を木島君に演じてもらえばなんとかなるだろう”と信頼してもらえるのはとてもありがたいこと。ただ、やはりほしいのは“木島ってやっぱこんな感じのキャラのこの声がはまるよね!”と言ってもらえるような唯一無二の武器。
声優として早いうちからその武器を見つけられる人や作れる人もいるんですけどね。ただ今の段階でそういった強みが無いからといって凹むのではなく、“今完成したらつまらないじゃん、ここから先10年くらい頑張って自分らしさを模索して磨いていこう”って思っています(笑)」
今は、オーディションに落ち続けて休みが続いたりしても、せっかくのこの時間になにか下準備をしておこうなどとできることを探し、前向きに日々を過ごせるようになったという。貴重な休みの日はどんなことをして心や身体を休ませているのか。
「家庭菜園にはまっているんですよ。ぜひ写真を見てもらいたい! ナスやミニトマトなど苗を買ってきてプランターに植えて育てています。すくすく育つのが楽しみで、次は枝豆を予定しています。夜にお酒と共に育てた野菜を食べる瞬間を想像するだけでワクワクしますね。
当たり前のように食べていた食材ですが、育ててみると意外な発見があるのもとても楽しいんです。ナスって、お花の部分が枯れてその先に実ができるなんて知らなかった。休みの日に丁寧に手入れをしたり、眺めたりしている時間は本当に癒されますね。
ハマりすぎていて、朝起きて天気が一番気になっちゃうほど。水分はともかく日照時間が少なくなるのが本当に困る。雨の日が続くと、光が足りない! やめてくれって思っています(笑)」