不用意な言葉をネットで発信してしまう(イメージ)
一般的に、SNSなどで他人を誹謗中傷する人は、匿名アカウントなどを使い、安全な場所に身を置いている場合が多い。もちろん開示請求などがなされれば、匿名アカウントでも具体的に誰の行為なのかをたどることは可能だが、誹謗中傷を受けた被害者が金や時間をかけて動かなければならず、被害者が泣き寝入りを強いられるパターンがほとんど。だからこそ、侮辱罪の厳罰化が、誹謗中傷をやめない人々を自制させるといった期待があるわけだが、A美による投稿のスタイルは違っていた。
「A美のアカウントをのぞくと、実名らしき名前が書いてあり、子供と遊園地に行ったり、買い物をしている写真がたくさんアップされていた。実名に見えるのはかえって怪しいと、他人になりすまし、モデルを攻撃するためだけに作られたアカウントかもしれないと考えて投稿を精査しましたんですが、どうも実在する本人のアカウントで、経営している飲食店の情報まで載っていたんです」(モデル事務所関係者)
そこで筆者は、件の店の連絡先としてグルメサイトに掲載されていた携帯電話番号にかけ、モデルへの誹謗中傷について、投稿したのがA美なのか問いただしたのだ。するとA美は、最初こそ「何のことかわからない」などと話していたが、最終的には「逆ギレ」。営業中に電話をかけてきて迷惑、営業妨害で訴えるだの、言論の自由があるだのと受話器が割れんばかりの大声で捲し立ててきたのである。
その直後、A美のアカウントには「鍵」がかけられて中身が閲覧できなくなり、数日後にはアカウントごと削除。携帯電話に連絡を入れたが、おそらく着信拒否をされたのか、呼び出し音すら鳴らなくなっていた。
実名顔出し、家族の写真まで投稿しているアカウントで他人を誹謗中傷するとは驚きだが、A美には後ろめたさがあったから「逆ギレ」でしか対抗できなかったのかもしれない。
反省していると言いつつ裏アカで「嫌がらせされている」と投稿
誹謗中傷に及んでも、後ろめたさを少しも見せず過ごしている者もいて、実はこちらの方が深刻だ。そう話すのは、都内の美容師・橋本雄一郎さん(仮名・20代)だ。
「SNSにお客さんのヘアスタイルを投稿しているのですが、そのコメント欄でユーザーさんどうしで言い合いが始まってしまったんです。それも、私が投稿した動画に映るお客さんとは、まったく関係がない人同士です。癖毛に悩むお子さんに縮毛矯正をかけたという投稿でしたが、コメント欄では子供に縮毛矯正をしていいのか、悪いのかという議論が始まった」(橋本さん)
この時は、ユーザー同士が誹謗中傷をしあうというという感じで、橋本さん自身が誹謗中傷されたわけではなかった。しかし、だんだん「みっともないババア」とか「化粧気のない貧乏人」など、目を覆うような罵詈雑言が飛び交うようになったため、橋本さんは投稿自体を削除。コメント欄が荒れては店の印象も悪くなるということで、その後の投稿では、コメント機能を停止することにした。