岸田文雄首相自ら、3回目接種の様子を発信した(2022年3月4日=時事通信フォト)
4月11日以降のデータからは、それまで接種歴があるのに正確な接種日時などがわからないため「未接種」とされてきた陽性者が「接種歴不明」に分類されるようになった。実際、集計方法が変わったことでワクチンの「未接種」は7万6877人(4月4〜10日)から、3万3207人(4月11〜17日)に激減。一方、正しく振り分けられた「接種歴不明」は3万7146人から7万8488人に激増した。
「未接種」での新規陽性者が大幅に減ったことで、ワクチン接種歴と新規陽性者の関係は一変した。前述の通り、従来の“間違った”集計方法では、未接種の方が2回目、3回目の接種を終えた人より10万人あたりの新規陽性者が多かった。
しかし正しい集計方法に改められたことにより、未接種と2回接種の新規陽性者数にほとんど差がなくなった。むしろ、「40〜49才」「60〜64才」「65〜69才」「70〜79才」では、未接種よりも2回接種の方が、10万人あたりの新規陽性者が多くなる逆転現象が生じたのだ。
「端的に言えば、“2回ワクチンを打った人は、打っていない人と感染のしやすさは変わらない”という結果が導かれました。
それだけではありません。新たな集計方法で『接種歴不明』に分類されるようになった人たちも、詳細がわからないだけで、接種したことは間違いありません。その人たちは本来ならば『接種歴不明』ではなく、『接種者』としてカウントする必要があります。改めて独自に試算したところ、ワクチンを2回接種した人の感染予防効果がマイナスになって、かえって感染しやすいという結果になったのです」(小島氏・以下同)
ワクチンの効果は時間が経過すると薄れることは以前から説明されてきた。効果が完全に消えたら、未接種者と同じスタートラインに戻るはずだ。それは問題ない。だが小島氏の試算から見えてきたのは、「2回接種者の方が未接種者よりもコロナに感染しやすくなる」という、衝撃の結果だったのである。
「感染予防効果がなくなるだけならまだしも、ゼロでとどまらずマイナスに陥ったのは憂慮すべき事態です。厚労省は、指摘を受けなければ集計方法を変えなかったかもしれないし、過去にはこの集計データをもとに“ワクチンの効果の高さ”を謳っていたこともありますから、さらに問題です」
同様の“誤った”集計方法は、ドイツのバイエルン州でも行われており、昨年末に現地新聞の指摘で見直されたケースがある。
「そうしたことも把握していながら、実態に即していない集計を続けていたのだとしたら、厚労省による数値の“改ざん”に等しい大問題だと言っていいでしょう」
「ワクチンは切り札」だったはずなのに
フランス在住のジャーナリストの羽生のり子氏が、デンマークの事例を挙げる。
「昨年12月、デンマーク当局が公表した資料によると、2回接種者の感染リスクが、未接種者の1.3倍だったと指摘されています」
コロナを防ぐはずのワクチンを打つと逆にコロナに感染しやすくなる──なぜそのような“想定外”が起きたのか。
「ワクチン接種後は気が緩むので、マスクを外して大声を出したり、夜の街に繰り出すなどハイリスクの行動を取りやすくなる」