米国からの情報を横流し

 取材を進めていくと、中国がロシア側に協力していた可能性が浮上した。中国政治の動向を追う北京の米外交関係者が証言する。

「米政府は昨年末から、入手したロシア軍がウクライナに侵攻することを示す極秘情報を内々に中国政府に伝えていました。ロシアが侵攻をやめるように中国が説得することを期待してのことです。ところが中国側は、情報を『中ロ関係を引き離すための陰謀』と受け止めて信じなかったうえ、ロシア側に提供していたようです」

 米国に強い対抗心と警戒心を抱く習近平政権らしい対応といえよう。中国はなぜウクライナ問題で、外交の基本方針に背いたうえ、米国との関係をより悪化させてまで、ロシア支持に傾いたのか。米外交関係者が続ける。

「習近平氏の決断でしょう。これに対し、私が会った多くの中国の当局者や専門家は、今回の首脳会談と共同声明について『ロシア寄り過ぎる』と述べていました。習、プーチン両氏の親密な関係に遠慮して公言しないだけです」

 ではこの会談で、プーチンから習に約3週間後に控えた軍事作戦について、何らかの具体的な通知があったのだろうか。米ニューヨーク・タイムズは「中国側は、五輪閉会前に侵攻しないようロシア側に求めた」と報じている。これについて、先の米外交関係者は否定的な見方を示す。

「具体的な作戦のタイミングや中身について、両者の間でやりとりはなかったようです。そもそも情報機関出身のプーチン氏が、軍事作戦を他国に漏らすことはありえません。習近平氏は事前にはほとんど知らされていなかったため、戦争の情勢判断を誤った可能性があるとみています」

 筆者もこれまで数多くの首脳会談を取材してきた。どんなに関係が深い首脳同士でも、最高機密である戦争に関する情報を事前にやりとりすることはない。この分析は合理的といえよう。

 習が何よりもプーチンとの友情を優先させて最大限の協力をしたにもかかわらず、肝心の軍事行動に関する情報を知らされておらず、結果として梯子を外された──。

関連キーワード

関連記事

トピックス

母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
日米通算200勝を前に渋みが続く田中
15歳の田中将大を“投手に抜擢”した恩師が語る「指先の感覚が良かった」の原点 大願の200勝に向けて「スタイルチェンジが必要」のエールを贈る
週刊ポスト
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
裏アカ騒動、その代償は大きかった
《まじで早く辞めてくんねえかな》モー娘。北川莉央“裏アカ流出騒動” 同じ騒ぎ起こした先輩アイドルと同じ「ソロの道」歩むか
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
【「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手】積水ハウス55億円詐欺事件・受刑者との往復書簡 “主犯格”は「騙された」と主張、食い違う当事者たちの言い分
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン