国際情報

【プーチンと習近平】世界でもっとも危険なふたり ウクライナ戦争で習が堕ちた“友情の罠”

ジャーナリスト・峯村健司氏が2人の“個人的関係”に迫る

ジャーナリスト・峯村健司氏が2人の“個人的関係”に迫る

【プーチンと習近平・連載第1回】ロシアによるウクライナ侵攻は国際社会から強烈な批判を浴びたが、中国だけは依然としてロシアをかばい続けている。『十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争』(小学館刊)で習近平が中国トップに上りつめるまでの覇権争いを明らかにしたジャーナリスト・峯村健司氏による、世界を混乱に導く2人の独裁者の“個人的関係”に迫るスクープレポートである。(文中敬称略)

 * * *

トランプの一言に動揺

 米首都、ワシントン市内で5月7日、米諜報機関、中央情報局(CIA)長官、ウィリアム・バーンズがロシアによるウクライナ侵攻について講演した。ロシアと関係を深める中国の国家主席・習近平の心情の分析を披露した。

「ロシア軍によるウクライナへの残虐行為に関連付けられることによって中国の評判が落ちたうえ、戦争に伴って経済の不確実性が高まったことに動揺しているようだ。なぜなら、習近平が最も重視することが『予測可能性』だからだ」

 バーンズは言葉を選びながら、習の心の内を読み解いた。伝聞調で語っているが、単なる憶測ではないだろう。全世界に広がる数万人といわれるスパイ・ネットワークから得た情報に裏付けられたものだからだ。

 バーンズの「予測可能性」という言葉を聞いて、筆者は2017年4月に米南東部のリゾート地、フロリダ州パームビーチで取材したあるシーンが脳裏によみがえった。ドナルド・トランプの大統領就任後初めて、習が訪米して晩餐会を共にしていた時のことだ。デザートに差し掛かったところで、トランプがフォークを止め、こう語りかけた。

「たった今、巡航ミサイルを発射した。あなたに知ってほしかった」

 米海軍艦船2隻が発射した59発の巡航ミサイル「トマホーク」が、シリア中部の空軍基地を攻撃したことを告げた。シリアが化学兵器を使ったことに対する報復だった。

 同席していた米政府当局者によると、チョコレートケーキを食べていた習は、10秒間の沈黙の後、動揺した様子で後ろを振り返って、「彼は今、何て言った」と通訳に聞き返した。当時の習の様子について、トランプも米テレビのインタビューに次のように答えている。

「習氏は『子供に化学兵器を使う残忍な人には、ミサイルを使っても問題ない』と言った。怒らなかった。大丈夫だった」

 この習のとっさの回答は、中国政府の外交方針を考えると適切とは言えない。米軍によるミサイル攻撃は、「内政不干渉」「紛争の平和的解決」という原則に反するからだ。米政府当局者が、当時の習の様子を振り返る。

「大統領からの突然の通告に動揺しているのが伝わってきました。話しぶりは堂々としていますが、アドリブに弱く、慎重な性格の持ち主だと感じました」

 この証言は、冒頭のバーンズの分析と符合する。中国側は、トランプの就任当初、政治経験のない「素人大統領」と軽くみていたが、この会談を転機に警戒を強めた。SNSを通じて政策を発表したり、中国を批判したりする「予測不可能」なトランプに、習近平は手を焼き続けていた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

吉野家が異物混入を認め謝罪した(時事通信、右は吉野家提供)
《吉野家で異物混入》黄ばんだ“謎の白い物体”が湯呑みに付着、店員からは「湯呑みを取り上げられて…」運営元は事実を認めて「現物残っておらず原因特定に至らない」「衛生管理の徹底を実施する」と回答
NEWSポストセブン
大東さんが掃除をしていた王将本社ビル前の様子(写真/時事通信フォト
《「餃子の王将」社長射殺事件の初公判》無罪主張の田中幸雄被告は「大きなシノギもなかった」「陽気な性格」というエピソードも…「“決して”犯人ではありません」今後は黙秘貫くか
NEWSポストセブン
小磯の鼻を散策された上皇ご夫妻(2025年10月。読者提供)
美智子さまの大腿骨手術を担当した医師が収賄容疑で逮捕 家のローンは返済中、子供たちは私大医学部へ進学、それでもお金に困っている様子はなく…名医の隠された素顔
女性セブン
英放送局・BBCのスポーツキャスターであるエマ・ルイーズ・ジョーンズ(Instagramより)
《英・BBCキャスターの“穴のあいた恥ずかしい服”投稿》それでも「セクハラに毅然とした態度」で確固たる地位築く
NEWSポストセブン
北朝鮮の金正恩総書記(右)の後継候補とされる娘のジュエ氏(写真/朝鮮通信=時事)
北朝鮮・金正恩氏の後継候補である娘・ジュエ氏、漢字表記「主愛」が改名されている可能性を専門家が指摘 “革命の血統”の後継者として与えられる可能性が高い文字とは
週刊ポスト
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「箱わなで無差別に獲るなんて、クマの命を尊重しないやり方」北海道・知床で唱えられる“クマ保護”の主張 町によって価値観の違いも【揺れる現場ルポ】
週刊ポスト
火災発生後、室内から見たリアルな状況(FBより)
《やっと授かった乳児も犠牲に…》「“家”という名の煉獄に閉じ込められた」九死に一生を得た住民が回想する、絶望の光景【香港マンション火災】
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン