iPS細胞を利用した内耳オルガノイドの作成
「抗がん剤は事前に投与と終了時期がわかっているので、例えばシスプラチン投与と同時に治療薬を投与できれば薬剤性難聴を予防できる可能性があります。2000人に1人といわれる遺伝性難聴の治療薬開発にiPS細胞が有効だと考えてもいます。またiPS細胞は患者の血液で作ることが可能なため、その患者の耳の病態を反映した内耳オルガノイドを培養できますから、より深く難聴の原因や有効な治療法を見つけ出したいと思っています」(栗原医師)
これからも難聴だけでなく、各分野でiPS細胞を使い、生体から取り出すことが難しい臓器の培養を成功させ、障害に対抗する画期的な創薬開発を目指してほしい。
取材・構成/岩城レイ子 イラスト/いかわやすとし
※週刊ポスト2022年7月1日号
栗原渉・東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室医師