ライフ

黒内障 発症者「1~2割が脳梗塞を起こす」のデータ、心筋梗塞のリスクも

侮れない黒内障のリスク(イメージ)

侮れない黒内障のリスク(イメージ)

 歳を重ねるにつれて発症するリスクが高くなる目の疾患として緑内障や白内障がよく知られるが、同じように怖い病気として「黒内障」がある。黒内障を発症すると、多くのケースで片方の目に黒い幕が下りたかのごとく視界が真っ暗になる。中には無数の黒い点が出現して視野の一部が欠けたり、目の奥で爆発があったような感覚で光が走った後に、モヤが出現して視野が遮られていくケースもある。

 5~10分すると回復することが多いが、脳梗塞につながるリスクがあるなど、放置してはいけない病気だという。では、どのようなメカニズムで黒内障は起きるのか。

 人間の体には血管が張り巡らされ、短時間で血液が循環することで全身の健康が保たれている。

 だが、血液中の悪玉コレステロールや脂肪でできたゴミ(プラーク)が動脈の内側に溜まると線維化し、血管が柔軟性を失って動脈硬化が生じる。さらに蓄積したプラークが破れるなどすると、血液が固まって血栓ができる。それが何らかの拍子で剥がれると動脈内を流れて血管を詰まらせる可能性がある。

 この現象は脳に血液を送る頸動脈で起きやすい。愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長で医師の伊賀瀬道也氏が語る。

「心臓から送られてきた血液は頸動脈で脳に向かう内頸動脈と、頭蓋骨などに向かう外頸動脈の二手に分かれます。川と同じで二股に分かれる地点には血液が勢いよくぶつかるため、老廃物が溜まりやすくプラークや血栓ができやすいのです」

 そして、剥がれたゴミが内頸動脈から枝分かれしている眼動脈で詰まると、黒内障が生じるのだ。

「眼動脈は非常に細いため、小さな血栓でも詰まる可能性があります。また、眼動脈自体の動脈硬化が進んだ結果、血管が狭くなって血流が塞がれ、黒内障となることもあります。つまり、黒内障の発症はすでに動脈硬化が進んでいることを示している。脳と目は繋がっているので、黒内障になったということは、いつ脳梗塞になってもおかしくない状態だということです。血栓による血管の詰まりが目に起きるのか脳に起きるのかの違いでしかない」(伊賀瀬医師)

 ただし、目の症状は一過性のもので収まる。

「眼動脈に血栓が詰まっても血流が押し流すこともあるし、血液中を循環するプラスミノーゲンというタンパク質が血栓などを溶かすため、一時的な症状だけで目の機能が回復するのです」(伊賀瀬医師)

 そのため見過ごされがちだが、二本松眼科病院の眼科専門医である平松類医師は、「症状が出たら必ずすぐに医師に相談を」と警鐘を鳴らす。

「黒内障は一般的に知られていないし、痛みを感じないので、“疲れ目”程度で流してしまって診察に来ないケースが実に多い。黒内障を発症した人の1~2割が将来、脳梗塞を起こすという統計があるのですが、それも黒内障で診断を受けた人の数を元にしたものなので実際にはもっと確率が高い可能性もあります。眼科でいいので、すぐに受診しましょう」

関連記事

トピックス

“令和の小泉劇場”が始まった
小泉進次郎農相、父・純一郎氏の郵政民営化を彷彿とさせる手腕 農水族や農協という抵抗勢力と対立しながら国民にアピール、石破内閣のコメ無策を批判していた野党を蚊帳の外に
週刊ポスト
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬・宮城野親方
【元横綱・白鵬が退職後に目指す世界戦略】「ドラフト会議がない新弟子スカウト」で築いたパイプを活かす構想か 大の里、伯桜鵬、尊富士も出場経験ある「白鵬杯」の行方は
NEWSポストセブン
「最後のインタビュー」に応じた西内まりや(時事通信)
【独占インタビュー】西内まりや(31)が語った“電撃引退の理由”と“事務所退所の真相”「この仕事をしてきてよかったと、最後に思えました」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン
小さい頃から長嶋茂雄さんの大ファンだったという平松政次氏
《追悼・長嶋茂雄さん》巨人キラーと呼ばれた平松政次氏「僕を本当のプロにしてくれたのは、ミスターの容赦ない一発でした」
週刊ポスト