副作用で「血糖値」が上がるリスクがある主な薬【1】
家族歴のある人は要注意
一方で、すでに「血糖値を上昇させる可能性」が判明している薬も少なくない。添付文書の副作用欄に「血糖値を上げるリスク」に関する記述がある薬を表にまとめた。
記載された文言は「血糖値の上昇」「高血糖」「糖尿病」など様々だが、いずれも同じリスクを示している。降圧剤や脂質異常症治療薬など、生活習慣病の治療でお馴染みの薬が少なくない。
内科医の谷本哲也医師(ナビタスクリニック川崎)が解説する。
「血糖値が上がる作用機序がある程度わかっているのが、降圧剤のサイアザイド系利尿薬とβ遮断薬です。いずれも膵臓のβ細胞に影響を与えるため、インスリン分泌が低下し、血糖値を上げると考えられます。また、β遮断薬は分泌されたインスリンの働きを鈍くするとも言われます」
あるサイアザイド系利尿薬の添付文書には、「重要な基本的注意」として、本人または家族に糖尿病のある患者について、〈高血糖を来し、血糖値の悪化や顕在化のおそれ〉が指摘されている。
「もともと2型糖尿病を持ち治療中の人はもちろん、家族歴のある人は副作用の影響が出やすい可能性があります。血糖値が高くなり始めた当初は症状が出にくく、実際に症状が出る頃には数値がかなり上がっていることが多い。いつもより口が渇くとか、気が付けば水をたくさん飲んでいる、夜間頻尿などが高血糖の症状です」(谷本医師)
すでに添付文書に記されたこれらの薬の「副作用」とは異なり、先述したPPIと糖尿病の関係性が証明されたわけではない。ただ、長期間の服用には注意が必要だ。
前出・室井氏が言う。
「PPIによる糖尿病の発症リスクの増加は、発売当初の添付文書に示された副作用とは性質が異なると考えられます。当初掲載される副作用は、服用後、短期的に確認されたものです。一方、先の研究結果で分かったPPIの糖尿病リスクは、長期にわたる服用の結果、初めて明らかになったもので影響がゆっくりと出たと捉えられます。長く飲み続けた後に薬をやめても、直ちにリスクが消えるとは言い切れません」
日々、新たな研究が積み重ねられるなかで、患者も新しい情報を知っていく必要がありそうだ。
※週刊ポスト2022年7月22日号