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大阪・天満の老舗酒屋の店主は“へんこ”に見えるが実は気さくで「誰でもおいでやす」

 大阪・梅田の東側、JR天満駅から徒歩5分、たこ焼き屋や串揚げ屋など昔ながらの商店が建ち並ぶアーケード街「おいでやす通り」にある『堀内酒店』。

「一見へんこ(大阪弁で頑固)やけど気さくで温かい人やで」と、常連客に慕われる3代目店主の堀内成佳(しげよし)さん(80才)が営む老舗だ。

昔ながらの商店街で長く歴史を刻んできた重みと温かさが溢れる店

昔ながらの商店街で長く歴史を刻んできた重みと温かさが溢れる店

「親父さん(店主)は実はなかなかの知識人で、字も上手いんやで」(70代)と話す客に向かって、「そんなん言うたらあかん」と店主は素っ気ない。

「親父さんは、誰でも平等に接してくれるところがいいんですよ。常連さんの輪ができていて入りにくい“立ち呑み”もあるじゃないですか。ここは誰でも気兼ねなく入れる店」(80代)

「親父さんに惹かれてくるお客さんが多いと思いますよ。酔っぱらって来るお客さんには、はい帰りぃ~ってビシッと言うし、優しさと厳しさを持ち合わせている人ですね」(40代、医療系)

「商売の醍醐味は、人間対人間でしょ。要するに会話の妙やね」と、あくまで店主は淡々としているが、静かに店の歴史を語ってくれた。

「明治初年に祖父が商売を始めて、大阪へ移ってきてここに店構えたんや。親父が跡を継いで、統制経済やった頃に、味噌や醤油、漬物なんか売っとった。その後、酒の小売り免許取って酒屋をやるようになってん。わしは、親父が亡くなって、30才のときに店を継いだんや。

 親の代からずっと“立ち呑み”はやっとったよ。昔は、ラワン材を使った1枚板のテーブルで、煙草の焦げ跡を鉋(かんな)で削ってた」(店主)。

「この界隈には、“立ち呑み”をやってる酒屋が何軒かあるけど、ここが一番古いんちゃうかな。ここへ来て、その後、もう一軒はしごすることもあるで。この町に住んだら“飲んべえ”になること間違いなしやな(笑い)。

 お客さんも親父さん(店主)も物静かで居心地がええねん。仕事終わりにまっすぐ家帰って嫁はんの顔見るんやなしに、ここへ来て自分だけの時間を持つ。この時間が私には必要不可欠なんや」(自営業、70代)

 店内には、流麗な筆文字で「店内はお静かに願います」などと書かれた張り紙がそこかしこにあり、トイレの壁には短歌が詠まれている。

「急ぐとも心静かに真ん中に」
「外に散らすな白玉の露」
「吉野の桜も散らば汚し」

「わしの遊び心なんや、わかるかいな」と、店主はにやり。

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