接種し続けるしかない
ファイザーやモデルナのmRNAワクチンは遺伝情報を体内に注射するもので、人類史上初の「夢のワクチン」としての効果が期待された。が、ワクチンは切り札にならず、流行と接種の追いかけっこが続く。
そもそも変異を続けるウイルスに対してワクチンの効果はあるのか。
英国保健安全保障庁の報告では、mRNAワクチンを3回接種すると、オミクロン株に対する発症予防効果は2~4週間後に60~75%程に高まるが、15週間後以降では25~45%程に下がる。また、入院予防効果は2~4週後は約90%だが、10~14週後は約75%になった。
つまり接種直後は効果があるが、時間が経つと夢のワクチンの“魔法”が解けてしまうのだ。二木氏は現状のワクチンの効果が限定的であることを認める。
「mRNAワクチンは従来のワクチンより比較的短時間で大量生産でき、安価である半面、効果が長続きしない可能性が指摘されています。しかも、現在まで我々が接種し続けているワクチンは、コロナ初期の武漢株が登場した際に作られたもの。ウイルスが変異すれば、ワクチンの有効性が低下することは目に見えています」
本来は変異種に対応したワクチンの開発が求められるが、各メーカーが二の足を踏んでいる。
「変異株対応のワクチンを開発しても臨床研究を終えるには最短でも1年。その間に新たな変異株が誕生すると、せっかく開発したワクチンが売れない恐れがあるため、各メーカーは新たなワクチンを開発しませんでした。
今回もモデルナがオミクロンに対応する改良ワクチンを作ると宣言しましたが、実用化できるのは今年9月以降で、世界中に届けるにはさらに時間を要します。その頃には新たな変異種が主流になっていて手遅れになる可能性がある」(二木氏)
また、ナビタスクリニック理事長の久住英二医師は、発症予防に有効なワクチン開発のハードルの高さを指摘する。
「コロナウイルスは今後も変異を続け、獲得免疫から逃避できる変異型が流行するでしょう。発症予防に有効なワクチンの開発は、今後さらに厳しくなる」
こうした状況では、変異株が登場してワクチンの効果が低くなる度に「その場しのぎ」として“型落ちワクチン”の接種を重ねるしかない。
「各国政府は、安定供給が見込める現在のmRNAワクチンの接種を“何もしないよりマシ”という方向で進めています。このままでは、今後も長期的にワクチンを繰り返し打ち続けることになる」(二木氏)
久住氏は追加接種の可能性についてこう語る。
「4回目接種の発症予防効果は短い。一方で、重症化予防効果については3回目まで接種した人ならば効果を持続できています。
政府が『発症予防が重要だ』という考えならば、今後5回目接種について検討が本格的に始まるでしょう」
それでも新たな変異株が出現し、感染が再拡大すれば、「6回目、7回目と続く可能性は否定できない」(久住氏)という。