国内

一般人が過激化する「ローンウルフ型犯罪」が増加 匿名のSNS投稿が背中を押す恐怖

ダークウエブは現在、主に“犯罪のプロ集団”が悪用しているとされる(写真/Getty Images)

ダークウエブは現在、主に“犯罪のプロ集団”が悪用しているとされる(写真/Getty Images)

《そろそろ、蔑ろにされた人々に向き合うべきかと》──安倍元首相銃撃事件を受けて、2ちゃんねる開設者のひろゆきさんはこうつぶやいた。殺人容疑で逮捕された無職の山上徹也容疑者(41才)は、幼い頃は裕福な暮らしだったが、母親が入信する宗教団体「統一教会(現・世界平和統一家庭連合)」に多額の献金をするようになり、家庭が崩壊したと報じられている。

 父の自殺、母の自己破産、兄の自殺などの苦境を経て、職を転々とする貧しい暮らしの中で統一教会への恨みを募らせた山上容疑者は、やがて統一教会の友好団体にメッセージを寄せるなど、祖父の岸信介元首相の代からかかわりがあったとされる安倍元首相に殺意を抱くようになり、社会から孤立してひとり黙々と銃を作っていた。

 いま注目されるのが、かつてひろゆきさんが命名した「無敵の人」と呼ばれる人たちだ。彼らは家族や友人、仕事といった、「犯罪を実行すれば失ってしまうもの」を持たない、または失っても構わないと考え、凶行に及ぶ。犯罪心理学者の出口保行さんが言う。

「こうした人は、自分は社会から認められていないという思いが強く、不満を一挙にはらすため凶悪犯罪に走ります。通常、人は犯罪の動機が生まれても、実行する前にリスクとコストを考える。ところが、無敵の人といわれる人々は、逮捕されて家族や友人、仕事や社会的信用などを失うことを恐れず、踏みとどまることがないのです」

 本人が社会からの隔絶を強く感じていることから、近年は「ローンウルフ(一匹狼)型犯罪」とも称される。反社会的な組織や思想とはかかわりがなかったはずの一般人が、インターネットなどで得た情報から過激化し、テロ行為などに及ぶことを指す。

 2008年の秋葉原無差別殺傷事件、2016年の相模原障害者施設殺傷事件、2019年の京都アニメーション放火殺人事件、2021年の京王線“ジョーカー”刺傷事件など、生活がうまくいかず孤立し、他人や社会に恨みを抱くローンウルフが手を染めた犯罪は枚挙にいとまがない。

 社会心理学者の碓井真史さんは、山上容疑者が県内有数の進学校出身であったように、ローンウルフたちは、学生時代には優等生であることも少なくないと語る。

「自分の能力の高さに自負があると、挫折や失敗したときに“おれ、頭悪いからさ”と開き直れず、“こんなはずじゃなかった”“どうして自分がこんな目に”と悔しさを募らせ、他人や社会全体を憎む傾向があります」

関連キーワード

関連記事

トピックス

記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO
《国分太一コンプラ違反で解散のTOKIO》山田美保子さんが31年間の活動を振り返る「語り尽くせぬ思い出と感謝がありました」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン