松商での18年間におよぶ監督生活のあと、北条高校を12年間指揮し、65歳で退職した後に母校へ戻った澤田が話す。
「力のない子をいかに指導したら、野球の技術が身につきやすいか。勉強になった北条での12年間でした。これまでもOBから、復帰を望む声はあったんやけど、現在の監督さんの意向を無視して戻るわけにはいかん。そんな時、大野監督から声をかけていただいた。こんな幸せはありません」
復帰にあたり、自らに「使命」を課した。
「まずは甲子園に出場すること。そしてもう一つ、全国でも松山商業しか権利のない4元号での優勝に挑戦すること。これは使命ではないかもしれんね。男の浪漫じゃろ」
大野と澤田にはそれぞれ別の場所で取材に応じてもらったが、奇しくも、両者は「浪漫」という言葉を使った。第1シードで臨んだ今夏は大野の前任校である今治西に3回戦で敗れたが、夏将軍の復活──それは高校野球ファンの浪漫でもある。
※週刊ポスト2022年8月5・12日号