国内

安倍元首相の国葬に思うこと 60代女性記者が改めて考える「美しい国、日本」

(時事通信フォト)

オバ記者が安倍元首相の国葬について思うのは(時事通信フォト)

 政府が安倍晋三元首相の国葬を決定したことをめぐり、賛否の声があがっている。『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子は、どう捉えているのか──。

 * * *
「きれい。建物もトイレもみんなきれい」
「オレもそう思った。きれいでビックリした」

 私の地元・茨城県から上京してきた小学6年生たちに国会議事堂内を案内するアルバイトを始めて足かけ4年。コロナ禍で見学募集を休止していたけれど、再開したこの春から、申し込んでくる小学校がぽつぽつと出てきたの。

 先日案内したのは20名の小学生と、私より若い校長先生と30代の教務主任だ。議事堂を案内した後、帰るまでにまだ時間があったので、衆議院議員会館も案内して、最後に子供たちに感想を聞いたら、口々に「きれい」と言ったのよ。

 そりゃあ、国の施設だから清掃会社がしっかり入っているし、衆議院議員会館は天井も高くてトイレもゆったりつくられている。それを子供たちは「きれい」と言ったのかと、周囲を見渡しているうちに思い出したんだわ。安倍晋三さんが総理大臣になったときに掲げた「美しい国、日本」のスローガンとは真逆の光景を。

 思い起こせばバブルが崩壊した30年前、新しい建物が建てられなくなった途端、地方の見た目はどんどんヤバくなっていたんだよね。去年、私が母親の介護で茨城県に4か月間住んだとき、改めてまざまざとその惨状を目にしたの。

 晴れた朝、小高い丘からの風景は誰にも教えたくないほどの美しさで、筑波山は紫色に輝いて、遠くには日光連山。バイクで走りながら何度「わぁお!」と歓声を上げたかわからない。

 でも、ふと横を見れば、さびたガードレールにひび割れた道路。国道を走れば、廃墟マニアだって近づかない廃業したパチンコ店に倒産したレストラン。これらがチラリと目に入るたび、無意識にパス、パス、パス。「見ちゃダメ!」と脳からの指令が出て、それがまた疲れるんだわ。

 わが郷里の名誉のために言うと、これは茨城に限ったことじゃなくて、日本全国どこでもそう。どんなに栄えている地方都市でも、中心街から少し離れると“廃墟群”が出現する。鉄旅で全国あちこちをフラフラしている私は、地方の駅舎から街中に出るとき、「何を見てもガッカリしません」と小さな覚悟を決めているくらいだもの。

 そうなった理由は、人口減と首都圏への人口集中。車社会に巨大なショッピングモール。それから長く続く景気の低迷……。耳にタコだ。

「いくらなんでも、こう廃墟が続くと気分が落ち込まない? 朽ち果てるに任せてないで、市や県が補助金を出して更地にすればいいのに」

 たまりかねて、知り合いの市議会議員にそう言うと、「金にならないことに予算がつくのは災害だけ」と即答された。「地方に美観を求めるのは、たまに田舎に帰ってくる都会人だけじゃない。地元民なら誰だってそう思っている」って返されたけど、そりゃ、そうよね。

 でも、あきらめたように市議はこうも言った。

「でも、目が慣れちゃうってこともあるかも。そうじゃないと、ここにいられない」

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン