胃がんバリウム検査は必要か
検査時に受ける放射線被ばくが体に与える悪影響も無視できない。
「エックス線検査と発がんの関係を調べた論文によれば、日本におけるがん死亡数のうち4.4%はエックス線検査が原因だと明らかになっています」(岡田さん)
気をつけるべきは乳房をエックス線で検査する「乳がんマンモグラフィー検査」も同様だ。
「40才未満の女性に限って言えば、乳がん検診を受けて死亡率が下がったというデータはありません。そもそも若年者の乳がん罹患率は低く、20代前半で10万人に1人。年齢とともに上昇しますが、30代後半でも数千人に1人と低い割合です」(村上さん)
ただし、若年であっても検査が必要なケースもある。
「家系に乳がん経験者が複数いる場合は、若くてもリスクが高い。遺伝が原因で起きる『遺伝性乳がん卵巣がん症候群』の可能性があります。一度病院に相談してから、検査を受けた方がいいでしょう。それ以外の人は、受けて得られるメリットよりもデメリットが大きいと言えます。特にアジア人には乳腺組織がよく発達し、エックス線を通すと真っ白に映る『高濃度乳腺』が比較的多く、健康でも偽陽性と判断されやすい。40才未満で症状がない場合、検査は全額自費となるため、お金も時間も無駄になります」(村上さん)
医療経済ジャーナリストの室井一辰さんも声を揃える。
「マンモグラフィーの是非については、アメリカでも否定的な声が大きい。実際、2022年3月に発表された研究結果では、マンモグラフィー検査を受けた40〜79才の女性40万人の半数が、がんではないのに偽陽性と診断されていたことがわかっています。健康なのに疑いをかけられるのは精神的にダメージを受けるうえ、針を乳房に刺し、細胞を採って調べる精密検査は体への負担が大きい。そのまま誤って治療されてしまうケースすらあります」
近年では乳房専用のエックス線撮影装置「3Dマンモグラフィー」を導入する検診施設も増えている。従来のマンモグラフィーと比較すると精度が高いのがウリだが、専門家たちは懐疑的だ。
「より乳がんが見つけやすくなったとされていますが、その分、まだがんになっていないしこりも見つけ出すので、精神的な負担が生じます。
そもそも、乳がん検診に頼り、“発見されなかったから安心”となることも問題です。乳がんは自分で発見しやすいので、定期的なセルフチェックが重要です。そこで違和感があればすぐに病院で検査を受けてください。医療機関をやみくもに信じるのではなく、“使いこなすこと”を考えた方がいい」(室井さん)
※女性セブン2022年9月1日号
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